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常に同世代に対してカッコよく魅せることが自分の仕事。やってきたことすべてをコンテンツにし、富裕層を魅了する仕事術とは。

常に同世代に対してカッコよく魅せることが自分の仕事。やってきたことすべてをコンテンツにし、富裕層を魅了する仕事術とは。

大学卒業後、数々の男性誌の編集長として活躍。なかでも10年間務めた『メンズクラブ』編集長時代は、『メンクラのトガッチ』として数々のメディアに登場し、大人気に。2017年に独立した後は、ファッション・ディレクターとしてカリスマ的人気を誇る。自らの体験を惜しむことなく発信し、大人の生き方やカッコよさ、楽しさを独自の視点で提案し続ける戸賀氏に話を伺った。

戸賀 敬城さん/オフィス戸賀 代表取締役
1967年東京生まれ。大学卒業後、世界文化社に入社し、Begin編集部に配属。1994年Men’s Ex(世界文化社)の創刊スタッフ、2002年Men’s Ex編集長に。2005年時計Begin(世界文化社)編集長、及びメルセデスマガジン編集長兼任。2006年 UOMO(集英社)エディトリアル・ディレクター就任。2007年4月に10代目『メンズクラブ』編集長に就任。2017年に独立し、ファッションメディアのプロデューサーとして活躍中。現在はJ PRIME編集長を兼任。
公式ブログ「トガブロ」:https://ameblo.jp/togablo/
Instagram:@togacci53

愛読雑誌の編集者か、巨額のお金を動かす広告営業か

― 大学卒業後は世界文化社に入社されていますが、大学時代から編集者志望だったのですか。

当時、大学生にとってのメディアといえば、雑誌しかありませんでした。私がよく読んでいた雑誌は男性ファッション誌「Begin」。その編集か、広告営業の仕事がやりたくて、世界文化社を受けました。なぜ世界文化社だったのかというと、愛読していた「Begin」を作っていた出版社だったことと、広告の量が多い「家庭画報」という女性向けの雑誌もあったからなんです。当時の「家庭画報」は、今書店に並ぶ雑誌からは想像できないほど分厚くて、コンテンツとともに、広告ページも多かった。どうすればあんなに大量の広告が取れるのかを学びたくて、実は営業職で応募しました。

― 分厚い家庭画報!確かに雑誌バブルの時代でしたよね。

当時の家庭画報の分厚さって、角で殴れば凶器になるぐらいでしたから(笑)。就職活動の面接のとき、私は大学生のくせに、アルマーニのスーツを着て、ロレックスの時計をつけて臨みました。そうしたら、当時「Begin」の編集長だった岸田一郎さんに、「なんでそんなスーツを着てるんだ。お前は編集をやれ」と言われて、広告営業ではなく「Begin」編集部に配属になりました。もともと読んでいて好きな雑誌だったので、編集者時代は趣味の延長で仕事をしていた、という感じでした。

― 好きなことが仕事になった、という最も幸せなパターンですね。

そうですね。以来、現在も含めて、好きなこと、やりたいことしかやってないかもしれません。編集の仕事も男性誌と車、時計などの専門誌しかやっておらず、すべて物欲をそそる内容ばかりでした。

編集長時代、石田純一さんとのトークショーの様子

「欲」がエネルギーの原点

― 戸賀さんは、ものすごくエネルギッシュなイメージがありますが、そのモチベーションの原点は何なのでしょう。

妻に、「あなたはいつまでたっても欲が止まらない」と言われたのですが、確かにその通りで、「欲」が原点なのかもしれません。モノが手に入ればその時点では嬉しいし、満足もしますが、服も時計も車も食事も、欲しいもの、食べたいものがどんどん出てくる。しかも私は、人に伝えるならまず自分が買って身に着けたり、経験しないと気が済まないんです。なぜなら、20万円のニットを勧める記事を、そのニットを身に着けてもいない、ただ文章が上手いだけの人が手掛けたって、説得力がありませんからね。

― そこが原点でもあり、戸賀さんの仕事感なんでしょうね。

そうですね。自分が体感したリアルを伝えることが、編集者時代から変わらない、私の仕事の揺るぎないコンセプトなのだと思います。

― 編集者としては、10年間「メンズクラブ」の編集長も務め、「メンクラのトガッチ」としてメディアにも頻繁に登場する名物編集長になられて。そんななか独立したのはなぜだったのでしょう。

私の父は、私が14歳のとき49歳で他界しました。自分が49歳になったとき、父のように早く死ぬのは嫌だな、と思って。ですから、49歳になったことを原点にして独立し、何かをやりたいと思ったんです。

時代も変わってきて編集長も「編集」というより「プロデュース業」中心の仕事になってきました。かつては予算をいくらでも使えた時代がありましたが、デジタルが出てきてからはそうはいかなくなり、限られた予算のなかで、いかに黒字にするかを求められるようになってきました。私はメンクラ編集長時代に、イベント、デジタルで業績を上げ、売り上げを約3倍にしましたが、そうした経験も活かせるかな、と。だったらもう「紙」ではなくて、別の分野で仕事ができるのではないかと思ったんです。

SNSのフォロワーが支えてくれた

― 独立後は、どんな仕事をしようと思ったのですか?

雑誌の世界も紙からデジタルに移行してきて、状況もガラリと変わりました。それまでは、編集者としてその流れに逆らわないように仕事をしてきましたし、時代や自分が置かれた状況の変化もそれなりに楽しみながらやってきました。特にラグジュアリー分野においてはさまざまな経験を蓄積してきましたし、人脈もあるので、それを更に活かせる仕事をしようと思いました。ちょっといやらしい言い方ですが、ミドルクラスではなく、お金持ちをターゲットにすることが、私の経験がもっとも活かせる。例えるなら、1つのモノを売って1億儲けるか、100万個売って1億儲けるなら、前者ではないか、と。

― ターゲットとなった、そのお金持ち層はどこから?

メンズクラブ時代、編集長の仕事をする一方で、自分の趣味などをSNSで発信していました。SNSならメンズクラブの戸賀ではなく、私のリアルが見えます。私のブログのフォロワーさんたちは、「メンクラの戸賀よりもSNSの戸賀が好き」と言ってくれる層が多い。年収で言えば3000万~1億以上の方たちです。私がプロデュースしたファッションやコスメ、メディアもこうしたフォロワーさんに支えられています。

― 戸賀さんのカリスマ性が支持されたわけですね。

私自身はカリスマとは思っていませんが…。ただずっと貯金もあまりせず、欲しいものを買って、身に着けて、食べてと、無理もしながらやり続けてきたことを認めてもらえたのではないかと思っています(笑)

身銭を切る。だからリアルが伝わる

― 確かに戸賀さんはすごくストイックですよね。

ストイックかもしれませんが、バランスは悪いです(苦笑)。お金があればあるだけ、欲にまかせて使ってしまいますし。私は今55歳ですが、港区の分譲マンションに住んでいる50代で、一番貯金がないおじさんだと思います(笑)。

でも、先ほど20万円のセーターの話をしましたが、実際にやってもいないのにわかったような口をきく人が一番わかっていないと思うんです。私自身、確かに無理はしています。中の下くらいの家庭に育っているのに、大学時代、キャッシュで1千万の車を買うなど、Z世代には信じられない生き方をしてきたので、新人教育なんてとてもできません。でも、身銭を切って、やりたいことをやってきたからこそ、身についたことがたくさんありますし、リアルに発信できるようになったのだと思います。

― 今の仕事は、これまでのご経験をすべてコンテンツにして、アウトプットされているわけですね。

事業としてやる以上、大きな利益は出さなくても赤字にはしないことを考えながらやっています。今年は、あるレストランを立ち上げようと計画中なのですが、もちろん自信があります。

「マイナス10歳見せ」は、大人世代にはちょっと無理がある

― 欲に忠実に生きてこられて、スキルを蓄え、才能を開花させていらっしゃる戸賀さんですが、戸賀さんのモノ選びのセンスや美学とは何なのでしょう?

モノへの視点は360°に向けているつもりですが、私はひとつひとつの分野に、それほど詳しいわけではないんです。でも、だからこそ、そんな自分を格上げしてくれるモノ・コトを選ぶことが大切だと思っています。具体的に言えば、自分を格上げしてくれるモノと、5歳若く見せてくれるモノですね。

― マイナス5歳がポイントなんですね。

実年齢より若すぎるマイナス10歳だと、正直言って、ちょっとギャップがありすぎませんか?私のターゲット層は、50代以上。落ち着きある大人世代があまりに若作りすると、ちょっと痛々しい感じを与えてしまうので、実年齢からマイナス5歳くらいがちょうどいいと思います。マイナス5歳なら流行りのトレンドにも向き合えますし、時代を取り込みながら楽しめます。無理のない大人の若魅せってカッコいいですよ。見た目で得することってたくさんありますから。

人とつどい、美味しいものを食べて楽しい時間を過ごすことも大切

― 戸賀さん自身がそれを発信しているから説得力がありますよね。

本来、雑誌はコンセプトを変えずターゲットは加齢、収入などによって雑誌を卒業するものです。多くのメディアはそれが上手くいっていない。でも私は、メディアではないので等身大のアラ還として情報を発信しているわけです。

― 戸賀さんは、おすすめのものを身にまとうだけではなく、しっかり身体づくりもやっていますよね。

50代以上になると、痩せすぎは貧相に見えてしまいます。それに、それに好きなゴルフに行ったら、スコアも飛距離も負けたくありません。だから筋トレもして身体を鍛えています。

― 最後に、読者の方に向けて自分を輝かせるためのアドバイスをいただけますか。

私は、ある意味自分の身の丈に合っていないことをずっとやってきました。それがたまたまうまくいったので、それを皆さんにやって欲しいとは言えません。ただ、人と同じことをやってもつまらないから、何かひとつ極めて欲しいというのが、私からのアドバイスでしょうか。ポイントは「ひとつでいい」ということ。何でもかんでもやってしまうと、どっちつかずで見た目も落ち着かなくなってしまうので、ひとつの分野で十分です。でも不思議なもので、ひとつを極めると、いろいろなモノの見方がとても変わり、見た目も生き方もプラスに生じます。だから自分を信じて、ぜひひとつの世界に投資してみてください。

文:伊藤郁世
撮影:Takuma Funaba

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