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【イベントレポート】重要性が高まる「エンプロイヤーブランディング」。プロが語る実践プロセスと成功のカギとは

【イベントレポート】重要性が高まる「エンプロイヤーブランディング」。プロが語る実践プロセスと成功のカギとは

職場の魅力や会社の取り組みを発信し、企業のカルチャーにフィットする人材の採用につなげる「エンプロイヤーブランディング」。人材の獲得競争が激しくなっている今、候補者になりうるターゲット層が求めているものを把握し、自社の魅力を伝えていくことが重要なポイントになります。NESTBOWLでは、エンプロイヤーブランディングをテーマにしたトークセッションを開催。当日はラグジュアリーブランドを中心とした、人事や採用広報の担当者が集まりました。ランスタッド株式会社のエンプロイヤーブランディングマネージャーを担当する土橋直子さんをお招きし、エンプロイヤーブランディングの事例や、明日からでも始められる具体的なアクションをお話しいただきました。

ゲストスピーカー:土橋 直子さん/ランスタッド株式会社 人事本部 タレントアトラクション エンプロイヤーブランディングマネージャー(写真:右)
英国大学院卒業後、プラダジャパンの社長秘書としてキャリアをスタート。2012年からアメリカ・カリフォルニア州へ移住。日系IT企業の米国支社設立に携わる。帰国後、Googleで人材開発、リシュモンジャパンでDE&Iプログラムマネージャー、 社内広報の経験を経て世界最大級の総合人材サービス企業・ランスタッド株式会社に入社。イギリス近世史に関する書籍の翻訳・出版、コラムの執筆経験を持つ。

モデレーター:田崎 直人さん/NESTBOWL株式会社 CEO(写真:左)
1989年、埼玉県生まれ。大学卒業後、クリエイティブに特化したエージェンシー事業を展開するクリーク・アンド・リバー社にて、ゲーム、ファッション、XRなど、主に新規事業立ち上げに従事。「NESTBOWL」ではCOOとしてサービス運営に携わり、2024年1月、現職に就任。家業である創業30年のもつ焼き専門店「せんとり」の経営サポートも担う。趣味はサッカーやランニング、テニスなどのスポーツを中心に、社会人漫才コンビとしての活動もしている。

社員全員が会社の魅力を伝えるアンバサダーのようになることが理想形

ー エンプロイヤーブランディングマネージャーは、ランスタッドで新設されたポジション。改めて、エンプロイヤーブランディングについて教えてください。

エンプロイヤーブランディングとは、「働き先としての魅力的な企業イメージを高める取り組み」のこと。従業員がその企業で働くことにやりがいを持ち、それを正しく外に発信し伝えられている状態が理想の形だと考えます。つまり、社員一人ひとりが企業の魅力を伝えるアンバサダーのような存在です。自分の企業で働くことが素敵だと感じていたら、家族や友人に話すと思うんですよね。そういう状態をつくれたらエンプロイヤーブランディングは成功していると言えます。従業員の幸せが重要なポイントですね。

ー 日本では、最近になって聞くようになった言葉ですよね。

コンセプトが生まれたのは1990年代ごろ。比較的新しいコンセプトですが、すでに世界的に重要視されていて、さまざまな企業が施策を行っています。今後、さらに重要性が高まっていくと思います。すぐに効果が出るものではなく、中長期的にじわじわと採用に効いてくるものだと感じています。

ー 知名度の高い企業でなくても、エンプロイヤーブランディングを実施する意味はありますか。

知名度がなくても、自社の魅力を訴求できます。認知が低い企業もエンプロイヤーブランディングをやるメリットはあると思います。

すべての人に知られていなくても、自分たちがターゲットとしている層の方々に働き先としての魅力を訴求していくことができれば、興味関心を引くことが可能です。まずは、ターゲット層となる人たちが何を求めているのか、どうやって情報を得ているのか、というのをリサーチして、それに合った形で自社の魅力を発信していくことが大事です。

ー エンプロイヤーブランディングを行うことで採用のミスマッチを防げるそうですね。

ブランドやプロダクトに憧れを持って入社したものの、実際に入社すると「自分が持っていたイメージと違った」というギャップが生まれることが多々あるかと思います。

入社する前に「どういう企業なのか」「どういう人が働いているのか」「どういう働き方ができるのか」などを理解している状況で入社すればミスマッチが防げるので、事前の情報提供が効果的です。

弊社では候補者が面接に来る前に、面接の案内とともに事業部のトップやマネージャーのインタビュー記事や事業部の動画等をお送りしています。事業部や一緒に働く上司の情報やビジョンがわかるので、面接では表面的な話ではなく、もっと深い話ができるのです。

インタビュー記事や動画などを作っておくことでさまざまな使い方、効果があると語る

エンプロイヤーブランディングのカギは“企業全体で進める”

ー エンプロイヤーブランディングを行う上で、大切なことを教えていただけますでしょうか。

カギになるのは2つ。ひとつは先ほどの話にもあった「ターゲットを絞ること」で、もうひとつは「ステークホルダーマネジメント」です。エンプロイヤーブランディングは、ひとりで行えるものではありません。部門を超えたステークホルダーの方たちと関係性を構築し、その方々との連携が大切です。

エンプロイヤーブランディングチームとしては私ひとりで活動していますが、HRのほかのチームやマーケティングチーム、マネジメント層の方々と密にコミュニケーションをとりながら、さまざまな施策を行なっています。

私は入社してすぐに「なぜエンプロイヤーブランディングが重要なのか」「何をビジョンにしているのか」「どんな戦略でやっていくのか」というのをステークホルダーの方々にプレゼンテーションし、合意をしていただきました。担当者がどんなにやろうとしても、マネジメント層の合意がなければ実施が難しい。採用だけでなく、社員のエンゲージメントにもつながってくるので、企業全体で進めていくようなイメージです。

ー エンプロイヤーブランディングが成功している事例や企業はありますか。

ラグジュアリーブランド企業の中には、SNSを使ってエンプロイヤーブランディングを実施している企業もあります。SDGsに力を入れており、それをSNSでうまく発信することで、ダイバーシティやサステナビリティに敏感な若年層に届いているのではないでしょうか。

会社の取り組みと候補者が求めているものに合致するものを外へ発信していくことは、今すぐにでもできることだと思います。わたしも採用チーム、ブランディングチームやコミュニケーションチーム、ED&Iチーム等様々なメンバーと定期的にキャッチアップし、そこで得た情報の中から候補者に響くコンテンツを発信しています。

特に外資系企業の場合、グローバルで情報が統制されていたり、ジャパン社独自で発信ができない、といったもどかしさを抱えている担当者もいると思います。そのような点はどう解決していくべきでしょうか。

仰る通り、特にグローバル企業やブランド企業など、ブランドガイドラインが細かく設定されている場合、スムーズに情報発信ができない企業もあるかと思います。だからといってエンプロイヤーブランディングができないというのではなく、それ以外にも魅力を伝える方法は沢山あります。例えば採用活動のなかで候補者に会社の魅力や考え方などを丁寧に伝えていくこともできると思います。

さまざまなメディアを使った働きかけも必要ですが、店舗を持つブランドであれば、ショップスタッフとカスタマーのやり取りや、面接時の会話も重要なタッチポイントです。ブランドのガイドラインが厳しくても、あらゆるタッチポイントで、一貫性をもって魅力を伝えられるように準備しておくことが大事です。

ー いまの転職市場は、販売職の採用が難しくなっているようです。ショップスタッフの方も、ある意味採用担当者になるくらいの気持ちで活動していくことが必要でしょうか。

「ショップで働きたい」という方であれば、おそらくそのショップを訪れたことがあると思います。ショップへ行けば、そこで働くスタッフの顔や仕事が見えますよね。冒頭で、従業員全員が企業の魅力を伝えるアンバサダーになることが理想だとお話しましたが、ショップスタッフについても同じことが言えるでしょう。

ー これまで土橋さんが行なってきた、具体的なアクションを教えてください。

わたしは、入社してからまず自社のEVP(Employee Value Proposition)=自社の魅力や従業員に対して提供している価値、を理解することからスタートしました。60名の従業員と1on1を行い、「なぜ入社したのですか?」と「なぜ辞めないのですか?」という2つの質問をしたところ、彼らが感じる会社の魅力が見えてきました。ただ、会社の中で従業員が魅力に思っていることでも、求職者が就職先を選ぶ上で重要でなければ発信してもあまり意味がありません。自社の魅力を把握するのと同じくらい、市場が何を求めているのかを理解することも大切。そこで合致する項目が、訴求ポイントになりますので、採用担当から実際面接等で候補者を惹きつけるポイントを聞いたり、弊社が行っている世界的調査「ワークモニター」や「エンプロイヤーブランドリサーチ」等さまざまな情報から候補者が職場に何を求めるかの傾向を学び、何を訴求すべきなのかを考えました。

イベントに集まった人事担当者から数多くの質問が飛び交った

ー 会社の魅力を知るためには、まず自社を把握することが重要ですね。最後に、今回集まった人事担当者のみなさまに向けてメッセージをお願いします。

自社の働く場所としての魅力を発掘し発信することで、ミスマッチの少ない人材を採用することができます。また、発信することで社員が自社の魅力を改めて知るきっかけにもなりエンゲージメントの向上にもつながりますのでぜひ取り組んでみてください。

エンプロイヤーブランディングを実行する上で大切なことや、すぐに取り入れられる施策、他企業の成功例などについて土橋さんに詳しくお話しいただきました。ぜひ、土橋さんが発信するLinkedinの情報も参考にしてみてください。NESTBOWLでは、企業の魅力を存分に発信するエンプロイヤーブランディングの活動をサポートし、採用活動にもつなげる支援をしております。ご興味がある方はこちらからお問い合わせください。

文:鈴木菜那
撮影:加藤千雅

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