年間個人売上1億5千万円を達成。入社11年目「THE TOKYO」表参道店店長のNo.1セールス術に迫る
ラグジュアリーホテルさながらの落ち着いた空間にまとめられた、東京・表参道にあるセレクトショップ「THE TOKYO」。約100坪を誇る店内には、ドメスティックブランドによるハイセンスな商品のみがラインナップされている。店長を務めるのは、運営会社である株式会社TOKYO BASEに入社して11年目の佐藤宏之さん。今年、同社独自のスーパースターセールス制度(一定基準以上の個人売上の10%を給与として還元していく制度)で、4スター(5段階評価のうち)に認定された。全社での年間個人売上・顧客様売上ともにNo.1となった佐藤さんのキャリアを振り返りながら実店舗でしか生まれない顧客コミュニケーションを売上に繋げる術を伺った。
佐藤 宏之(さとう ひろゆき)さん/「THE TOKYO」表参道店 店長
1991年生まれ。大分県出身。学生時代はサッカーに打ち込み、明治学院大学在学中にはJリーグアカデミーのチームに所属するも、怪我で選手への道を断念。卒業後、2014年に株式会社TOKYO BASEへ新卒入社。アパレルブランド「STUDIOUS」での営業職(=販売職)としてキャリアをスタートさせ、現在は「THE TOKYO」表参道店店長として業務に従事。今年、優秀な営業成績を修めたスタッフに与えられるスーパースターセールス制度では、4スター(5段階評価のうち)を獲得している。
サッカー選手の夢を断念し、選んだファッション業界
ー 学生時代はサッカー選手を目指していたそうですね。ファッション業界を志望したきっかけを教えてください。
小学生から大学生までサッカーひと筋で、将来もプレーヤーとして活躍することを夢見ていました。大学在学中もJリーグアカデミーに所属して、プロ契約を結ぶための活動を行っていました。しかし、繰り返し怪我に悩まされた末、大学2年生の時にサッカー選手になる夢を断念することに。
その後、サッカーの次に興味のあることを仕事にしたいと考えた時、ファッション業界へ進む未来がフワッと思い浮かんだんです。そして、その思いは大学3年生に留学先のイギリスで出会った日本人の影響によって強くなりました。
ー その日本人というのは?
ファッションビジネスを学ぶ大学に通っている日本の学生でした。大学で学んでいることを色々共有してくれて、刺激を受けましたね。帰国後は、友人が立ち上げたファッション系の会社での手伝いを通して、この業界を知ることに時間を費やしました。
手伝いをしていた当初は、卒業後もその会社で働くイメージを漠然と抱いていたのですが、営業が上手くいかなくて。その時、ファッション業界で働いていくためには着実に人脈を広げていく必要があると思って、就職活動をはじめました。
ー そのような中、TOKYO BASE(当時の社名は株式会社STUDIOUS)を就職先として選んだのはなぜですか。
実は店舗を訪れたことは一回も無かったのですが、リクルートページを見たときに「面白そうな会社だな」と感じたこと、また自分次第で理想的なキャリアを形成できる可能性に魅力を感じてエントリーしました。
ー 2024年で入社11年目を迎えますが、これまでどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか。
内定してからは、内定者アルバイトで「STUDIOUS」新宿店の営業職(=販売職)としてキャリアをスタートさせました。ただ、接客業に携わりたいわけではなかったので、お客様とのコミュニケーションを通して商品を購入してもらう難しさを痛感していました。
というのも、それまで接客に感動をして商品を購入する体験をしたことがなかったので、どう接すればお客様に喜んでいただけるか分からなかったんです。ただ、そこで不貞腐れるのではなく、先輩の接客や営業スタイルを目で見て学び、合間を縫ってアドバイスをもらう時間を作るために作業効率性を意識して動くようになりました。
ー 努力を積み重ねた結果、入社2年目にして「STUDIOUS」渋谷ルミネマン店店長に就きましたね。
サッカーでは過度なトレーニングやチャレンジングなプレーによって、選手生命が断たれる可能性がありますが、この業界においては失敗が次に繋がることが大いにある。だからこそ、チャレンジする姿勢を崩すことなく、店舗の目標売上を追い続けることができましたし、結果として店長へ任命されたのだと思っています。
以降は、本部での営業部長も経験しながら7店舗、11回に渡り店長職に就き、現在はセレクトショップ「THE TOKYO」の店長として働いています。
個人売上を給与へ還元するスーパースターセールス制度
ー TOKYO BASEでは若手の抜擢人事も珍しくないそうですが、そのようなカルチャーが風土として根づいているのでしょうか。
弊社は結果主義なので、結果を出している人にチャンスが与えられる環境が整っています。ただ、そのチャンスをモノにできるかはその人次第。ステップアップしていく人たちは、掴んだチャンスをモノにし続ける人が多いですね。
ー そのファーストステップにもなり得る、スーパースターセールス制度について改めて教えてください。
2017年から導入されたスーパースターセールス制度は、一定基準以上の個人売上の10%を給与として還元する制度で、雇用形態は問われません。なお、評価は1スターから5スターまでの5段階評価となっており、それぞれ年間の個人売上8千万円、1億円、1億2千万円、1億5千万円、2億円を達成した営業スタッフが認定されます。従来のアパレル業界ではマネジメントラインへの昇格が主流だった中、営業職を継続しながらキャリアアップを図れる選択肢の付与、また営業職の社会的地位向上を目的としたものです。
導入されたばかりの頃、私はマネジメントに集中していたため、スーパースターセールス制度への関心は高くはありませんでした。しかし、「THE TOKYO」表参道店店長へ就任して間もなく、制度を意識するようになりました。理由としては売り上げが芳しくなかったこと、スタッフの人数が少なかったことが挙げられます。自分自身の営業能力を上げることで、スタッフの意識や能力も底上げできるのではないかと考えた末、スーパースターセールスを目指しました。
ー 実際にチャレンジをしてみて、いかがでしたか。
初めて1スターを獲得した時、嬉しさと同時に自分より上がいるという事実を突きつけられて悔しかったんですよ。でも、素直に悔しいと思える瞬間があることって、いいことだなとも思いました。
モチベーションや目標設定は人それぞれにしろ、目指すべき指標があることで、自分がなぜTOKYO BASEで働いているのかについて考えるきっかけにもなります。導入以降、上昇志向の高い人たちが入社してくることが多くなったと個人的には感じています。
ー 昨年(2023年2月~2024年1月)は、全社年間個人売上・顧客様売上No.1となる1億5千万円を達成されましたね。「THE TOKYO」表参道店を作る上でどのような点に力を入れましたか。
お客様に営業をしなくても商品が売れる環境づくりに力を入れました。そのためにターゲット層である30代〜50代男性のお客様の反応や会話からヒントを得ることが多かったです。
ライフスタイルや服を選ぶ基準・頻度の変容など、現場でヒアリングしたお客様の声を参考にしながら、“売れるアイテム”とはどのようなものなのか、その解像度を上げていくことに注力しました。
そうして整理した情報をバイヤーやMDと共有し、時にバイイングの権限ももらいながら、お店に並べる商品をひとつずつセレクトしていきました。店舗が目に入った時に「いい商品がありそう」という印象を多くのターゲット層に与えることができたからこそ、急激に売上が伸びていったと考えています。
「あなたから買いたい」と思える接客を提供するのが大切
ー 11年にもわたって販売職として働いてきたわけですが、佐藤さんが一番大切にしてきたことは何ですか。
愚直に仕事と向き合い続けることです。人と向き合い、自分と向き合い、自身を高めていくというサイクルを大切にすることでご来店するお客様が多くなり、顧客様が増え、売上に繋がることを身をもって知ることができたからです。
その経験が昨年(2023年2月〜2024年1月)全社年間個人売り上げ・顧客様売り上げNo.1を獲得できた最大の理由だと思っています。
ー これからの販売職に求められるスキルはどういったものでしょうか。
その人にしか創出できない価値を、いかに提供できるかだと思います。スマホひとつで膨大な情報へのアクセスやショッピングをすることができますが、その人から買いたいという購買意欲を駆りたてる何かを持っているということはとても大きな武器になると思います。
私を例にお話しすると、自信のある記憶力を生かし、今、リレーションシップを構築していきたい顧客様一人ひとりに合わせた商品情報を提供し、来店の機会を創出することに力を入れています。来店して下さった方とは密にコミュニケーションを取り、相手への理解を深めつつ自分自身を知ってもらう、価値を感じてもらうということに繋げています。
ー 最後に、今後考えている展望などがあれば教えてください。
5年後、10年後を見据えているというよりは、今取り組んでいることに集中しているというのが率直な思いとしてあります。会社では年収1億円プレイヤーをつくるという話をちらほら耳にするので、大きな売上を生み出すスタッフの足掛かりになれたら嬉しいです。
個人を評価してくれる会社だからこそ、自分が出来ることがあれば積極的に取り組んでいきたい。何より、そういったプロジェクトが発足した時に、円の中心となって動ける人でありたいと思っています。
文:芳賀 たかし
撮影:船場 拓真