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「大名古屋展2025」が名古屋市シティプロモーションの後援事業に!公民連携で広がる都市ブランディングの可能性

「大名古屋展2025」が名古屋市シティプロモーションの後援事業に!公民連携で広がる都市ブランディングの可能性 NEW

地元の人が名古屋・愛知を誇りに思うことで、県外の人も「行ってみたい」と思うきっかけをつくりたい──。そのためにも地元の企業・スポーツチームとのコラボレーションを通じて“国内外に名古屋・愛知の魅力を発信しよう”と「ビームス ジャパン」プロジェクトリーダーの佐野明政さんが発起人となり、2019年からスタートした「大名古屋展」。今年で6回目となる「大名古屋展2025」では、名古屋市の山口隆司さんの協力を得て、名古屋市シティプロモーションの後援事業として開催されることが決まった。今回、名古屋市とビームス ジャパンが連携するに至った背景や、同イベントを通して目指すビジョンについて伺った。

山口 隆司さん/名古屋市 総務局企画部 シティプロモーション推進担当課長(写真:左)
愛知県名古屋市出身。1998年、名古屋市に入庁。名古屋の魅力や価値を浸透させ、名古屋に対するポジティブなイメージを形成し「名古屋ブランド」として確立することを目指すシティプロモーションを担当。現在は「大名古屋展」にも積極的に関与し、市民や事業者と連携しながら名古屋の魅力や価値を内外に発信する取り組みを推進している。

佐野 明政さん/株式会社ビームス クリエイティブ ビジネスプロデュース部 プロデューサー(写真:右)
愛知県名古屋市出身。2000年ビームスに入社。2010年に修士号取得。ショップスタッフを経験したのち、アウトレット事業、ライフスタイル業態であるビーミングライフストアの立ち上げを手掛ける。2015年よりビームス ジャパンのプロジェクトリーダーを務め、立ち上げから現在まで、「日本の魅力的なモノ・コト・ヒト」を国内外に発信する数々の企画を主導。2022年からは、「BEAMS SPORTS」も担当。 2019年、名古屋・愛知を盛り上げるイベント「鯱の大祭典」の象徴となる名古屋グランパスの選手ユニフォームのデザインオファーをきっかけに、「大名古屋展」を立ち上げた。

公民連携で、名古屋・愛知の知られざる魅力を発信

― はじめに、「大名古屋展2025」の内容を教えてください。

佐野明政さん(以下:佐野):今回はお店を飛び出して、街を盛り上げながら、名古屋・愛知の魅力を伝えていきます。今年の5月27日に名古屋・大須で行った記者発表会当日には、ちんどん屋さんが楽器を演奏し、口上(宣伝文句)を述べてもらう中で、名古屋グランパス、名古屋ダイヤモンドドルフィンズの選手、参画企業の方々と「日本一元気な商店街」といわれる大須商店街を練り歩きました。このようなアクションを通じて一般の方にも取り組みを伝えていきます。

また、会場の一つである「ビームス 名古屋」では大学生と名古屋の魅力を見つけて発信するアウトプットも準備しています。今年3月、ワークショップを青山学院大学の学生と実施したところ、外からの視点や若い感性で、地元の人では気づきにくい魅力が見えてきたんです。そこに僕らの視点を掛け合わせることで、「こんなこともできるよね」と新しい発想が生まれるのが面白いなと。リアルな場だからこそできることを、会場でもやってみたいですね。

― 今回は、名古屋市シティプロモーションの後援事業としての開催も決まりました。名古屋市としては、どのようなお考えがあったのでしょうか。

山口隆司さん(以下、山口):私たちは、「大名古屋展」を名古屋・愛知の魅力発信の一つの柱として大変期待しています。名古屋市は自動車産業をはじめ世界有数のモノづくりの拠点として、経済も人口も発展・成長してきました。ただ、それゆえに都市のイメージづくりに戦略的に取り組むことが十分でなく、地元の人が「名古屋といえば=〇〇」と言えるものが少ないのが現実です。その影響もあって、若者を中心に関東圏への人口流出が続いています。

そこで、生活環境が良いことや楽しいものがあること、まちの将来性があることなどのポジティブなイメージを戦略的に発信することで、「名古屋ブランド」が確立されることを目指し、私たちは2024年4月からシティプロモーションの取り組みを本格的にスタートさせました。名古屋市としても相当な決意と危機感を持って取り組む中で、イメージ戦略のために「大名古屋展」とコラボレーションしたい、と考えたのです。

― 「大名古屋展」のどのような部分に共感されたのですか。

山口:イベントを開催する目的や、地元の企業・スポーツチームとのコラボレーションで名古屋を盛り上げようとしているところです。以前から、個人的にも憧れのブランドだったビームスが開催する「大名古屋展」の存在は知っていて、“いつかご一緒したい”と考えていました。

すると昨年、都市ブランディングのワークショップに取り組む中で、「名古屋のイメージをよくしたい」という熱い思いを持つ佐野さんと偶然知り合い、名古屋ブランドを形成する上で外せないパートナーだと感じ、コラボレーションをお願いすることにしたのです。

「大名古屋展2025」のメインビジュアル
写真提供:「鯱の大祭典」「大名古屋展2025」合同記者発表会

名古屋・愛知への想いがつないだ、行政とのタッグ

― お二人が出会ったあと、すぐにコラボレーションが決まったのですか。

山口:いえ、すんなりと決まったわけではありません。「大名古屋展」は「ビームス ジャパン」の事業としての取り組みでもあり、参画企業にも負担があります。そこに行政が並んで参加するには難しい部分もあり、協賛という形での参画はハードルが高かったんです。それでも、“より多くの人に佐野さんの熱い思いを届けたい”という気持ちで、さまざまな取り組みを続けていました。

― 佐野さんの思いに共感された理由を教えてください。

山口:僕自身も名古屋に強い魅力を感じているからですね。大きな魅力のひとつだと感じているのは「やりたいことを実現しやすいこと」で、おかげで充実した豊かな生活を送ってきました。例えば、名古屋は都会であって野球場も多く、子供時代はのびのびとプレーできましたし、大人になって趣味のバイクレース活動に打ち込めたのも、ショップも多くマシンを所有・整備しやすい都心でありながら、駐車場などで経済的な負担が少なかったからです。

そんな名古屋の良さをもっと多くの人に知ってもらいたいからこそ、佐野さんの思いに共感して、「ビームス ジャパン」にシティプロモーションのブランドロゴをあしらった法被制作をお願いしたんです。その中でお互いに理解し合い、「大名古屋展」の後援へとつながっていきました。

「ビームス ジャパン」に依頼して作った法被を着て取材に参加頂いた名古屋市山口さん

― 名古屋市の後援事業になったことについて、佐野さんはどのようなお気持ちですか。

佐野:目指す姿が同じ強力な仲間のお墨付きをもらえて、これまで続けてきてよかったなと。ゼロからの立ち上げには泥臭いことも必要でしたが、”地元 名古屋・愛知を盛り上げたい”という想いがあったからこそ続けてこれました。

2016年、日本の魅力を発信する「ビームス ジャパン」を立ち上げて、さまざまな自治体や企業と取り組みながら、地域の魅力をもっと多くの人に伝える方法を探していました。そのとき、名古屋グランパスさんとのコラボレーションが決まり、「スポーツ×ファッション」という異業種と組むことで、僕たちのやりたいことを実現できると気づいたんです。だからこそ、地元の企業とタッグを組める「大名古屋展」でも力を出しきりたいなと思いました。

また、地元を離れて東京で暮らしたからこそ「名古屋って面白いじゃん」と気づけた魅力もあり、それを伝えていきたいという気持ちもあります。魅力ある街に育ててもらい、楽しい思いもたくさんしてきた。その恩返しをしたいからこそ、開催までやりきろうと思えたんですよね。

― そうして過去5回の実績を残すに至った佐野さんの思いにみなさんが共感して、後援事業へとつながっていったのですね。今回のコラボレーションで、さらに新たな展開が生まれそうです。

佐野:参画企業同士のつながりに行政が加わることで、できることがもっと増えていくはずです。僕は、常に新しい景色を見たいと思っています。自分が想像もしていなかったことが生まれてくるのって楽しいじゃないですか。そんな展開が、これからまた起きることを期待しています。

名古屋市の後援事業になることで様々な機会を創出できるのではないかと語るビームス佐野さん

持続可能なブランディングで、選ばれる都市を目指す

― 「大名古屋展」をきっかけに企業との連携をさらに広げていくため、今後のシティプロモーションではどのような展開を予定されていますか。

山口:ブランドパートナー」という枠組みを設け、私たちと名古屋の魅力や価値を創造したり、発信したりしていただける企業や団体を募集する予定です。都市のイメージづくりは一朝一夕にはいきませんが、「名古屋のために何かしたい」という思いだけでは継続が難しいのも現実です。

そこで、ブランドパートナーとして名古屋の魅力について発信してくれる企業にもメリットがある仕組みをつくり、ともに末永く継続して発信し続けられるようにしていきたいと考えています。まさに「大名古屋展」はそのモデルケースで、今回の連携には大きな意義を感じています。

― 地元の企業・スポーツチームや行政とコラボレーションしながら、思い入れのある名古屋・愛知の魅力を発信する。佐野さんの理想が少しずつ形になってきましたね。

佐野:そうですね。ただ、手応えはありつつも、本来目指していた「地元の人が名古屋・愛知を誇りに思うこと」には、まだたどり着けていないと思っています。だからこそ、今後も行政と組むことなどでスケールアップしながら、僕らのやりたいことを実現していきたいです。

山口:「ビームス ジャパン」のコラボレーションによる発信が刺激になって、名古屋の人や企業の自己肯定感は高まるはずです。何年後か先、「名古屋って、こんなイメージがあるよね」といわれるように、シティプロモーションと「大名古屋展」を必ず成功させたいですね。

両者の想いの根幹には「名古屋」の魅力を多くの方に届けたいという熱い気持ちがある

― 最後に、お二方の今後の展望を教えてください。

佐野:個人的には、2026年の「アジア・アジアパラ競技大会」は世界に名古屋・愛知の魅力を発信するチャンスなので、ぜひお役に立ちたいなと。リニア開通や名古屋駅再開発などにも地元企業とコラボしながら僕たちの強みを発揮したいですし、市内一の祭りである「名古屋まつり」などともご一緒し県内外に魅力を伝えたいです。これまでの「大名古屋展」で積み重ねてきた信頼関係をベースに、取り組みの幅や深さを増やしていきたいと思っています。

山口:今後もさまざまな企業・団体と連携して名古屋・愛知を盛り上げて、ポジティブなイメージを国内外に広げていきたいですね。そのためにも名古屋の魅力や価値を見える化・言語化して発信していき、名古屋ブランドを確立する必要があります。そして、「住みたい」「働きたい」「訪れたい」「投資したい」都市として選ばれるようになることで、名古屋市の成長、発展につなげていくことを目指しています。

文:流石香織
撮影:船場拓真

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