【連載⑦「大名古屋展2025」の裏側】日本ガイシが参画して感じた、企業連携と「クロコくん」の力 NEW

今年で6回目の開催を盛況に終えた「大名古屋展」。主催者のビームス ジャパンが、企業や団体、スポーツチームとコラボして、名古屋・愛知の魅力を発信、シビックプライドの醸成、名古屋・愛知に足を運んでもらう機会創出を目指すプロジェクト。それだけでなく、地域をつなぐコミュニティの役割も担っている。本連載では「大名古屋展」プロジェクトリーダーの佐野明政さんがコラボ企業や団体の方々をゲストに迎え、名古屋・愛知のコミュニティが目指す未来について語り合う。
今回のゲストは、セラミックメーカーの日本ガイシ株式会社・コーポレートコミュニケーション部の大谷睦さん。モビリティや半導体など多岐に渡る業界へ常にチャレンジを続ける同社が、「大名古屋展」に参画する理由、新たに得られた気づき、ビームス ジャパン「大名古屋展」とのコラボで起きた化学反応について伺った。
大谷 睦さん/日本ガイシ株式会社 コーポレートコミュニケーション部(写真:右)
日本ガイシ株式会社の広報担当として企業ブランディングの一翼を担う。企業キャラクター「クロコくん」を活用し、自社の魅力を発信する活動にも注力。その一環として2024年から「大名古屋展」に参画。
佐野 明政さん/株式会社ビームス クリエイティブ ビジネスプロデュース部 プロデューサー(写真:左)
愛知県名古屋市出身。2000年ビームスに入社。2010年に修士号取得。ショップスタッフを経験したのち、アウトレット事業、ライフスタイル業態であるビーミングライフストアの立ち上げを手掛ける。2015年よりビームス ジャパンのプロジェクトリーダーを務め、立ち上げから現在まで、「日本の魅力的なモノ・コト・ヒト」を国内外に発信する数々の企画を主導。2019年、名古屋・愛知を盛り上げるイベント「鯱の大祭典」の象徴となる名古屋グランパスの選手ユニフォームのデザインオファーをきっかけに、「大名古屋展」を立ち上げた。2021年より現職。
「クロコくん」が伝える日本ガイシの価値観
佐野明政さん(以下:佐野):日本ガイシさんが「大名古屋展」に参画したのは、今回で2回目ですね。
大谷睦さん(以下:大谷):はい。弊社はセラミック技術を軸にしたBtoB企業で、一般消費者向けの商品やサービスを直接提供していません。そのため、弊社の存在や事業内容を伝えにくいことが広報担当としての悩みです。そこで「大名古屋展」への参画を通じて、普段なかなか接点のない方々にも、弊社に興味や関心を持っていただきたいと考えました。異業種である「ビームス ジャパン」の企画力やクリエイティビティ、ブランド発信力をお借りすることで、より多くの方々に弊社の魅力を知っていただけるのではないかと期待しました。
佐野:「大名古屋展」では、御社の企業キャラクターの「クロコくん」のグッズが人気でした。こちらは、広報の目的で作られたキャラクターですか。
大谷:「クロコくん」は、弊社の“ものづくり魂の化身”として私たちの価値観や企業姿勢を伝える存在です。人形浄瑠璃や歌舞伎で舞台を支える黒衣(クロコ)を由来としており、「縁の下で表舞台を支える、不可欠な存在」という弊社の役割を象徴しています。昨年の「大名古屋展」では、クロコくんを随所にあしらった、ノートパソコンやステーショナリーを収納できるマルチケースやボールペン、IDケースなど、仕事や学びの場で活躍する皆さんを応援するグッズを開発しました。今年はキャップとポロシャツといった新たなアイテムを展開しました。ビームスジャパンとのコラボレーションにより生み出されたもので、クロコくんとともに日常のさまざまなシーンで日本ガイシの価値観やブランドメッセージを感じていただけるよう工夫しています。

佐野:会場には、御社の社員の方もたくさん買いに来てくださった印象です。社員のみなさんの「クロコくん」に対する愛をとても感じましたね。
大谷:「クロコくん」は社内広報や掲示物、ノベルティーグッズなどにも積極的に活用しています。社員の一体感やエンゲージメント向上に寄与するという考えからです。「大名古屋展」を通じて、「クロコくん」が社員にとっても愛着のある存在となっていることを改めて実感しました。
佐野:私が店頭で接客をしていた際、高齢の男性が来店されました。お話を伺ったら「私、実は昔日本ガイシで製造に携わっていたんです」と。OBの方だったんですね。「昔働いてた会社が紹介されるから、嬉しくて来た」とお話しくださいました。
toB企業の場合、引退後に日常生活でその企業にと接点を持つ機会は少ないですよね。しかし今回のようなイベントでは、OB・OGの方が勤めていた会社と再び接点を持つことができる。世代を超えてそういった場を提供できるのは、すごくいいなと思いました。
大谷:就職活動中の学生から、ビームス ジャパンとの取り組みについて質問が寄せられました。「クロコくん」のさまざまな取り組みを通じて、日本ガイシのブランドロイヤリティの向上、ひいてはドアノックのきっかけになればと思っています。
佐野:「クロコくん」を通じた活動がインナーブランディング、アウターブランディングとなっているのですね。

ビームス ジャパンがハブとなってつなぐ、企業間ネットワーク
大谷:実は私、「大名古屋展」はtoCの企業が多く参加されている印象を持っていました。ですので、弊社にお声かけいただいた際は、嬉しい一方で少し意外にも感じました。
佐野:ビームス ジャパンは「大名古屋展」を通じて、地元の企業のお役に立ちたいと強く考えています。名古屋・愛知はものづくりの企業が多いですし、日本ガイシさんはその中でも特に世界に誇る企業のひとつ。「クロコくん」を介して、多くの方に日本ガイシさんの魅力を伝えることができるのではないかと考えました。
大谷:まさにその通りになったと感じています。私個人も「大名古屋展」への参画を通じて、異業種の企業の取り組みに触れ、さまざまな広報担当者と意見交換できて大変刺激になりましたね。
佐野:「大名古屋展」は単なる商品販売のイベントではなく、コミュニティづくりを担うプロジェクトです。ビームス ジャパンをハブとして企業同士のつながりが生まれ、それが発展していくととても嬉しい。また、そういった新しいアイデアや取り組みが生まれるコミュニティになればいいなと思っています。「大名古屋展」スタート時に全参画企業様と行う決起集会も、とても好評です。「こんなに貴重な機会はない」と、皆さん積極的にお話をされたり、名刺交換をされたり。皆さんがそうしたつながりを求めておられるのでしょうね。
元々、私は楽しいことが大好きなんです。だからいつもプロジェクトを企画する際には、和気あいあいと皆さんで一緒に楽しんで作り上げていきたい。その方がいいアイデアが浮かんでくると信じているからです。前回から大谷さんに記者会見にも登壇してもらいましたが、いかがでしたか。
大谷:新聞に取り上げていただき、メディアを通じて当社の取り組みを伝える貴重な機会となり、大変ありがたく感じています。
弊社は来年4月、社名変更という大きな節目を迎えます。これを機に、単に社名が変わるだけでなく、私たち自身も新たなステージへと進化、挑戦していくことを知っていただきたいと考えています。新しい社名「NGK株式会社」とともに、変革を続ける企業姿勢を「クロコくん」と一緒に発信してまいります。
佐野:「クロコくん」の活躍によって、御社の知名度向上が加速することに期待します。ビームス ジャパンにとって、「大名古屋展」は新たな顧客との接点をつくる機会でもあります。「ビームス」の顧客は現在、30代、40代が中心なので、大谷さんをはじめとした20代の方とプロジェクトを行うことは、私たちにとっても新しい価値観や考え方に触れる機会で、意義のあるものでした。 「大名古屋展」は、同じ名古屋・愛知にありつつも普段関わりの少ない企業同士がシナジーや化学反応を起こし、つながりをつくるプロジェクトです。ここで新たに生まれた関係を今後、更に活かしていきたいです。
文:梅原ひかる
撮影:Wataru Sato