バーチャルヒューマンimmaの仕掛け人「プロデューサーM」が考えるSNSと未来 vol.2
新型コロナウイルスの影響で、ファッション業界全体にも大きな影響がありました。職を失い、他の業界に転職する人が増えた他、従来とは違った形での働き方も新たに生まれています。今回はバーチャルヒューマンのimma(イマ)のプロデューサーであるMさんのキャリアストーリーをお伺いしながら、バーチャルモデルのこれから、そしてSNS時代の今後についてお話を伺いました。(vol.1はこちら)
―ここ2年ほどで少しずつ他にもバーチャルヒューマンが増えてきていますね。今後さらに増えていったときのimmaちゃんの立ち位置や他との住み分けはどうなっていくと思いますか?
どうなんですかね。もう既にいっぱいいるんですよ。この数ヶ月で中国でもいっぱい生まれたし。ずっと追っかけてるといろんな形で色々出ているので、あんまり気にしてないですね。やりたいことが明確にあって、それを実現していければいいかなってくらいです。追っかけてたらキリがないなっていうのもあります。
―あんまり他社を追っかけすぎない。
うん。企業で出している目的も違うと思うので、一応社内で共有はしますけどあんまり気にしていないですね。
―今はimmaちゃんに対してお洒落で可愛い女の子のようなイメージを抱いてますが、今後ファッション以外での分野での活動もお考えですか?
実際ファッションよりも広告モデルとかが多かったりもするのですが、これは本人も僕らもそうですけど、何か普遍的なテーマを取り扱っていきたいなと思ってます。IKEAと契約したのもSDGs(持続可能な開発目標)大きかったりしたので。そういうサスティナブルな活動とか無駄を省いていく作業とか、そういうのに興味がありますね。
―最終的にどういう見え方をするのか、どうやって世の中に出るのかっていうこだわりですよね。
はい。それは人間もバーチャルヒューマンも変わらないとは思いますね。完全に消費します!って事務所もあるじゃないですか。出てくる人を常に変えて…ある程度年齢いったら辞めて…みたいな。工場みたいなシステムですよね。それとは考え方が違う。
―個人的にはバーチャルヒューマンのimmaちゃんが、別のバーチャルであるZEPETO(ゼペット)やあつ森で遊んでいるのも面白いなと思いました。
ZEPETOを始めたのは本当に最初の方からで。10枚くらい写真投稿したくらいからやってたんです。それがすごい話題になったんですよ。パリに行ってた時期はずっとZEPETOをやってたんで。
―バーチャルの先にまた別のバーチャルがあるのが新鮮です。
個人的にこの先はもっとこうなっていくと思います。メタバース (英: Metaverse)と言われる言葉があるように、人間とバーチャルヒューマンと2Dのキャラクターイラストとか、ゆるキャラとかもそうですけど、いろんな表現の形が共存していく世界がもっと加速する。特に日本はその状態がカオスな状態になっていく。表現の幅や表現の技術が増えて2Dの悟空やAKIRA、いろーんな表現が実写に転用されていったりというのはどんどん増えていくかなと思います。その最たるがEpic Gamesのやってる『フォートナイト』(Fortnite)とかだと思うんですけど。そこで、トラヴィス・スコットがライブとかやってたりしてるし。Nintendoの「あつ森」では色んな(実在の)美術館がオープンしたり。そういうリアルとバーチャルを行き来するコンテンツはどんどん増えると思います。FacebookもHorizon(ホライズン)をリリースしたりとか、KDDIやアップルがARグラスを出すとかやっていくと、どんどん変わっていくのかなと、表現の共存が増えていく。
―そういった変化は今年のコロナ禍で今まで腰が重かった企業でも映像に移行したり、急激に新しい表現の変化が感じられるようになった部分でもあるのかなと感じました。こういった不測の事態にもバーチャルモデルならではの利点があったように感じます。これについてはいかがでしたか?
それは作った時からよく言われていました。「良いですよね、不祥事を起こさないから~!」とか。でもそれを言われると複雑な気持ちになるんですよ。そういう目的で作ってるんじゃないって思っているので。まあ、実際起きないでしょうけど、俺が何か不祥事を起こしたらそれが不祥事になるわけで。あんま変わらないんじゃないかな?とは思っているんですけど。
ただコロナの影響で、いろんなことがオンライン・バーチャル化されていったのでそういう需要は高まっていますし、問い合わせは止まらないくらい物凄く来ます。
―immaちゃんの世界がさらにどんどん広がっていくという可能性もありますか?
まだまだ全然これからだと思っています。アジアに増えていったりしているので、これからもっと驚くようなプロデュースの内容が出てくると思います。結構決まったら、えええ?そんなのやるの?って驚くようなことが多いと思いますね。
―ちなみに、immaちゃんは構想から完成どのくらいだったのですか?
3ヶ月くらいじゃないですか? 2018年の春くらいに考えて、春に話をして、7月にはリリースしたので。
ーすごく早いですね。
結構焦ってたんですよね、他が出てきそうな気がして。
ー実際早かったですよね。
「個が最強になる時代」がくるなっていうのを感じてて。で、プラットフォームとかを作ったりする仕事もしてたんですけどやっぱりすごく大変で、お金も必要だし。全てが「個」に集中するなら、「個」を作っちゃった方が早いなと考えて、究極の「個」を作ったんです。その「個」の次の先をやろうと思っているのが現段階です。今年や来年にいくつか発表していくと思います。ただ、個の時代だ!って今言っている人は逆にもう遅いと思います。そのくらいのスピードで時代は動いてますからね。
ー現時点で会社に縛られない生き方というのが時代の流れで目につくようになってきましたが、インフルエンサーとかもそうですけど、そういう人たちが力を持ち始めるっていうのを2年前の時点で感じていたってことですよね。
それはもう15年前から思っていました。
―SNSができたくらいからですか?
その当時書いたメモに残ってて、紐解いていけば当たり前の話なのですが、僕自身テレビ見てなかったし、周りの人も見てないし、僕の年齢の世代って就職しないで会社立ち上げる人もいっぱいいたんですよ。既に働き方は違ったんです。さっき話したように企業の宣伝費がどんどん下がっていくのを目の当たりにしていて、でも映像をやっている以上は企業の宣伝費で飯を食ってたわけで。でも、僕自身テレビ見てないから、宣伝費出さないでマスメディアで打たなくなるのは、当たり前にわかるじゃないですか。で、SNSが出てきて、ウェブ上にいろんなメディアが増えて。消費社会のものを売るっていう宣伝費がグァーッと細かく分配されていくなと。数百人でプロダクションやってる会社はプロデューサー1人単価何億あげなくちゃいけなかったり。「なんでうちらこんな頑張ってるんだっけ?」ってなったら、100%数人単位でやれる映像プロダクションが増えるのは当然だと思ったんですよ。この先いっぱい辞めていくなと。SNSとかしか俺らは見ないから、ここに広告費が流れていくなと。今まで1億ボン!と出してたのが、ここには5千万、ここに3千万、5百万、何十万…って細かく分かれていく。そうするとプロダクションが必要なくなって辞めていく。代理店も細かい発注が増えていく。じゃあ代理店もでっかい母体じゃなくて良いんじゃないの?って辞めてく。実際代理店でもスタークリエーターがどんどん辞めてるんですよ。SNSが活発化していくともっと道が増えていく。それで僕自身、表に出る人と距離が近いので話を聞いてたりすると、結局表に出てる人もクリエーションが好きだから、良いものを作る人とやりたいって話になって。タレントはお作法的にマネージャーに話すけど、マネージャーも上司にお伺いを立てないといけなくてタレントからきた仕事を断るみたいなこともあって。と、なるとマネージャー自身も「あれ?事務所の意味ってなんだっけ?」ってなってくっていうのがもう次の時代かなと。
SNSとかが分からない人とかは「とりあえず様子見ましょう」みたいな感じで、それを誰も責める人がいないとどんどんマーケットに埋もれていくなっていうのは感じますね。それを感じてた時に、じゃあ何やろうかな?ってなった時に、人を作ろうと。バーチャルヒューマンっていうのを作ったという。まあ、他にもいろんな経緯があったのですが。
―最近はSNSでスタッフ個人アカウントを持たせるブランドも増えてきて、誰もが発信者になる時代です。アパレルを目指す人たちにとってもimmaから学ぶことも多いように思います。アパレル業界、そしてブランドやデザイナーを目指す若者、またクリエイティブな事業に関わりたい方へメッセージ&アドバイスをお願いします。
好き勝手にやることです。
―例えばSNSでフォロワー増やさなきゃとか考えない方がいいですか?
まあ、それはあった方がいいとは思うんですよね。綺麗事じゃなくてフォロワーがいた方が届けられる。テレビでいう視聴率と同じなので。あった方がいいとは思いますけどそれに左右される必要はないかなって。フォロワー集めたいんだったら、余計にさっきの言葉かも。好き勝手にやるっていう。計算なんかしないで、嘘なんかつかない方が伸びますよって。うちの会社のテーマが結構そこかもしれない。「JUST DO IT」に近いというか、勝手にやれ、みたいな感じです。もちろんそこに計算も必要ですけど本質はそこにあると思います。
―Mさんのキャリアは映像からバーチャルヒューマンのプロデュースまで多岐に渡っており、職業の枠組みに囚われていないですよね。Mさんご自身の今後の展望をお伺いしたいです。
なんでしょうね。日本初世界一とかやりたいですけどね。そういう結果を出すってことはしたいなと。スポーツとかではあるんですけど、カルチャー面で日本発のものが海外で快挙を成し遂げるってことはあんまりないので。ゲーム界はすごいですが。そういうものに携われたり、プロデュースできたら嬉しいなと思います。
―ありがとうございました。
imma instagram:https://www.instagram.com/imma.gram/?igshid=7jaudxwehuga
バーチャルヒューマンというと自分と遠い架空の世界の話のように感じていましたが、Mさんのお話を通して急速に自分の世界とバーチャルの世界の触れ合う機会が増えていることを実感しました。コロナ禍の影響で急速にオンライン化や働き方そのものの考え方が社会全体で変わってきている中、Mさんの考える仕事の選択の仕方は自己プロデュース力が試される現代において多くの人に参考になるお話だったのではないでしょうか。
Text : Erinam