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「“着たい服を着る”を、すべての人にとっての当たり前に」。これまでにない、新しい洋服のお直しサービス「キヤスク」とは

「“着たい服を着る”を、すべての人にとっての当たり前に」。これまでにない、新しい洋服のお直しサービス「キヤスク」とは

企業・個人を問わず、いま私たちに求められているのはさまざまな価値観や多様性を認め合い、共生すること。そんなインクルーシブな社会の実現に大きく一歩前進するサービスが登場した。(株)コワードローブが提供する、障害や病気を抱える人々のための洋服のお直しサービス「キヤスク」だ。20年勤めた「ユニクロ」を辞めて起業し、このサービスを立ち上げた代表の前田哲平氏に詳しくお話を伺った。

前田 哲平さん/株式会社コワードローブ 代表取締役CEO
1975年福岡県生まれ。大学卒業後、銀行勤務を経て2000年に(株)ファーストリテイリング入社。首都圏にある「ユニクロ」2店舗で店長として勤務したのち、本部にて生産計画、販売計画、経営計画、EC運営などに従事する。2020年に同社を退職し、2021年に(株)コワードローブを設立。2022年3月より、障害や病気を抱える方々向けの服のお直しサービス「キヤスク」をスタート。

“着やすいか”ではなく、“着たい”と思う服を着てほしい

―「キヤスク」とは、どんなサービスなのでしょうか。

ひとことで言いますと、「障害や病気を抱えている方が既製服を着やすくするお直しを、気軽に、着やすくご依頼いただけるオンラインサービス」です。障害や病気を抱えている方は、どうしても“着やすいかどうか”という視点で服を選ばれていることが多いのですが、そうではなく、“自分の好み”で自由に選んでほしい。自分の好みの服を着るという選択肢がとても少ないというお悩みをお持ちなので、それを解決するサービスです。

― 具体的には、どういったお直し内容、サービスの流れなのでしょうか。

「キヤスク」のお直しは、一般的なお直し屋さんが行うような裾上げやほつれ直しといったものではなく、障害や病気のある方の身体状態に合わせて、洋服をお直しするもの。「Tシャツやカットソーを前開きにする」、「ボタン留めをマジックテープ留めに変える」など、いくつか基本メニューがあり、お客様に希望するメニューを選んでいただきます。そしてオンライン上で、キャスト(外部協力のお直しスタッフ)と打ち合わせを行ってもらい、洋服をキャストにお送りいただきます。キャストがお直しを行ったら、お客様の元へお送りする、という流れです。

― なるほど。「オンライン+配送」で完結するのは、とても便利ですね。キャストはどのような方々ですか。

現在、キャストは全国に11名おり、その多くは障害を抱えているご家族がいる、あるいは洋服の選択肢の少なさを実感してきた方々です。そのため、お客様のお悩みやリクエストを具体的にイメージすることができます。また、「キヤスク」は店舗を持っていないので、価格も比較的リーズナブルにご提供できます。こういったお直し内容は、通常のお直しやさんでは受け付けてもらえないことが多く、仮に受け付けてもらえた場合も、かなり高価格になってしまうようです。

服のお直しは、日常生活であきらめていた願いも叶えられる

―  ユニクロを辞めたことを後悔していないですか?そもそも、このサービスを考えるようになったきっかけを教えてください。

2018年頃のファーストリテイリング時代に、障害を抱える方には服のお悩みがあることを知りました。そこで、業務とは別の活動として、障害のある方やその介助者の方々から、服のお悩みをさまざまな形でヒアリングする活動を始めました。結果的に、800人の方のお声を聞くことができました。当初は、ユニクロで何かできないかと考えましたが、ひとつのブランドでやるより、様々なブランドで行った方がより多くの人に喜んでもらえるだろうと考えるように。それで会社は2020年末で退職しました。自分が起業するなんて、その数か月前まではまったく思っていませんでしたが…。最後はどうしても「キヤスク」のサービスをやりたい、という強い想いがあって退職を決めました。ですので、退職したことはまったく後悔していません。

― この1年弱の間で、さまざまなお直しのご依頼を受けてこられたそうですね。

アイテムで言えば、Tシャツ、カットソー、パンツ、アウターなどから、学生服、スポーツ観戦用のユニフォームまで。ブランドも「ユニクロ」のような大衆的なものから、「プラダ」のようなラグジュアリーブランドまで幅広くお受けしております。実績点数は現時点で約300点とまだ少ないですが、その一方でとても高いのがリピート率。ありがたいことに、サービスを開始して最初の半年で、利用してくださったお客様の半分以上が2回目の注文をしてくださいました。毎月注文してくださるお客様も何人もいらっしゃいます。

実際のお直しの事例

― お客様との印象的なエピソードはありますか。

「プラダ」のTシャツのお直しをご依頼くださったお客様は、以前は着ていたけれど、ご病気かケガで今は着られなくなってしまった、というご事情でした。お直しをしたところ、「お気に入りのTシャツをまた着られる」と喜んでいただけました。そのことを嬉しく思うと同時に、「キヤスク」のサービスは“洋服を大切に長く着ていく”ことにも繋がっているんだと感じました。また、スポーツの応援ユニフォームや学生服も、本当は着たいけどあきらめていたお客様。「キヤスク」は、お客様の“着たい”という気持ちに応えるだけでなく、その先にある“スポーツ観戦を楽しみたい”、“楽しい学校生活を送りたい”という日常生活の希望まで叶えることができると、気づかされました。

「キヤスク」の知見を、世の中のブランドや企業に広めていきたい

―「キヤスク」のサービスは、アパレルブランド、百貨店や商業施設、アウトレット施設などとも連携していけそうですね。

おっしゃる通りです。ただ、アパレルブランドと連携して「キヤスク」のサービスを組み込んでいただく…というのはすぐには難しいのかな、と。まずは、CSR活動の一環で行うようなイベント、ポップアップにスポット的に参加する、もしくは共同で開催するという形が好ましいのではと思っています。百貨店や商業施設でしたら、常設の場を設けていただくこともできるかもしれません。

― CSRパートナーとなってくれる企業もお探しだとお聞きしました。

「キヤスク」と協業してくださる企業、スポンサーとして当社をご支援いただける企業を探しています。当社としてはそのような企業のPRを行う、あるいはCSR活動パートナーとしてお役に立てると考えています。例えば、そのCSR活動に必要な集客や周知を行う、「キヤスク」のサービスをお得なカタチでご提供する、これまでの知見や実績を元にしたアドバイスを行うなど。いま多くの企業が、障害や病気を抱えている方々に向けたCSR活動、ES(従業員満足度)活動に力を入れておられます。そういった活動を、当社がお手伝いできれば嬉しいです。

― 今後の「キヤスク」の展望、前田さんが実現されたいことを教えてください。

ひとつは、もっと多くの方々に「キヤスク」を知ってもらい、サービスをご利用いただくこと。もうひとつは、「キヤスク」をさまざまな企業やブランドのものづくりのヒントやきっかけにしていただくこと。なぜなら、「キヤスク」でお直しした服には、お客様の喜び、キャストたちの工夫やこだわりがたくさん詰まっています。そんなストーリーや知見、ノウハウを「キヤスク」の中だけでとどめておくのはもったいない、と思うからです。これから、世の中にきちんと伝わるようにたくさん発信していきたいです。

キヤスクでは、SDGsに取り組みたい企業様とのコラボパートナーを募集中です!CSR活動の一環で行うイベントや、商業施設における、キヤスクの常設窓口設置、特例子会社の従業員様向けに、福利厚生の一環など、様々なかたちで、SDGsに取り組む企業様のお役に立てると考えております。まずはお気軽にこちらからお問い合わせください。

文:鈴木 里映
撮影:Takuma Funaba

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キヤスクは、身体の不自由に合わせて既製服を着やすくするお直しを、気軽に、気やすく依頼できるオンラインサービスです。