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誰もが知る老舗の化粧品ブランドが、これまで以上に“洗練されたブランド”“憧れられるブランド”として認知されるために

誰もが知る老舗の化粧品ブランドが、これまで以上に“洗練されたブランド”“憧れられるブランド”として認知されるために

90年以上の歴史と実績を持つ化粧品ブランド、ポーラ。訪問販売からスタートし、現在は、化粧品・カウンセリング・エステの3つのサービスが融合した「ポーラ ザ ビューティー」を軸とした路面店舗、百貨店、オウンドECを販売チャネルとして展開している。中でも成長著しいオウンドECにおいて、マーケティング・コミュニケーションを担う大崎さんに、ご自身のキャリアの歩み、ポーラブランドイメージの変化、顧客層の多様化、マーケターとしての課題などについてお話を伺った。

大崎 深衣さん/株式会社ポーラ EC事業部 マーケティング戦略チーム
広島県出身。大学進学で上京し、新卒でヤフー株式会社に入社。インターネット広告営業、クライアントのデジタルマーケティングに携わる。一時大阪の拠点へ転勤となり3年間過ごした後、再び東京へ。約10年キャリアを積んだ後、2021年3月、株式会社ポーラに入社。

成長真っ只中のインターネット広告業界に飛び込み、得たものとは

― 新卒でヤフージャパンに入社された理由について、お伺いできますか。

明確な動機はないんです。小さなころからの夢が叶わず、就職活動をどうしようかと考えていた時期に、たまたまヤフー株式会社が入居していた六本木ミッドタウンの地下のカフェでアルバイトをしていまして。常連のお客さまにヤフーの方が多かったんです。とてもいい方が多く、スタイルも柔軟で、「こういう会社で働いたら面白そう」と思い、入社試験を受けたら合格できたのです。

― インターネット広告業界は、この10年くらい非常に伸びてきた業界だと思うのですが、お仕事はいかがでしたか。

広島出身ということもあり、インターネット広告なら地方のお店も盛り上げることができるところに興味を感じていました。当時は検索エンジンといえばYahoo!JAPANという時代。まさに伸びているという実感がありましたね。ブランドパネル広告(※)にも勢いがあり、新卒の私でも何千万、何億という契約が取れたりしました。その後海外から様々なメディアが台頭してきて、厳しくなったりもしましたが、クライアントや広告会社の社長クラスの方々へ対等な立場で提案させていただくなど、いろいろな経験をさせていただきました。

※Yahoo! JAPANのトップページに設けられているディスプレイ広告枠。

― 検索手法やプラットフォームも多様化する中、約10年間デジタルマーケティング業界に身を置いたことで、ご自身としていちばん得られたものは何でしたか。

どんな業界でも必要とされる知識やスキルが身についたことです。ポーラに入社できたのも、デジタルマーケティングの知識やスキルがあったからですし。また前職でお世話になった方と今も仕事をご一緒することもあるなど、人脈や人との繋がりを得られたことは大きかったですね。

いかに戦略的で効果を生み出せるプロモーションを展開していくか

― 現在、ポーラで大崎さんが携わっていらっしゃる職務範囲をお教えください。

公式オンラインストアの運営を行っているEC事業部の主にマーケティングを担っているチームに所属し、新規顧客獲得をミッションとするユニットのリーダーを務めています。広告やクリエイティブを通じてプロモーションを展開し、商品の認知度を向上させるのが主な仕事。特定のブランドを担当するというのではなく、ECサイトで扱う全てのブランド・商品を、ECでどう売っていくかという視点で仕事をしています。

― お仕事のやりがいや大変さをどのように感じていますか。

きちんと戦略を立案し、効果を生み出せる施策を展開していかなければならないという責任は大きいですね。またコロナ禍を経て、お客さまとの接点のデジタル化が進んでいることから、社内からの注目度も高く、重要なミッションを任されていると感じています。今まさに成長フェーズにあるため、求められている期待と現実とのギャップを感じることも。老舗企業なので、ブランドのレギュレーションが厳格ですし、薬機法を遵守しながらも、多くの人に興味を持っていただけるような内容を考える必要があり、「こうしたらもっとデジタルで勝てる」とわかっていても、それが表現できない難しさもありますね。

「大人の女性向け」から、若い世代にも「かっこいい」「洗練されている」と支持されるブランドへイメージが変化

― 今はECで何でも買い物ができる時代です。ただ、ある世代以上の方がもつポーラのイメージは、「地域社会に根付いているブランド」「小さな化粧品店で取り扱っている」、そして消費者像は「比較的年齢の高い方」ではないかと思うのですが、現在の顧客層はどのようになっているのですか。

今おっしゃったような昔のイメージを持たれている方と、最近ポーラを知った方に分かれているといいますか、顧客層が変化している最中という感覚があります。実際に近年のブランド調査では、「お母さんが使っている」というイメージから、「洗練されている」「高級感がある」へと変化していることが顕著に見て取れます。

当社は研究開発部門が強く、独自開発の美容成分を配合した革新性ある製品を発表しているのですが、お客さまのリテラシーが向上していることから、製品情報を正しく取得し、「高価でも使う価値がある」と評価してくださるお客さまも増えてきています。だからといって、無理に若年層向けにイメージチェンジしようということではなく、年齢や性別を問わず、幅広い方々に手に取っていただきたいという思いがあります。

たとえば今年4月1日に、ポーラ最高峰ブランド『B.A』より発売した新アイテム『B.A ミルク フォーム』が数週間で発売から1か月で、予想の3倍のスピードでほぼ完売してしまったのです。『日経MJ』の上期ヒット商品番付にも掲載されたのですが、幅広い世代のお客さまからご支持をいただきました。

B.A ミルクフォーム:美容液とひとつになった引き締め泡乳液

― 1ヶ月で完売ですか! その背景には何があったのでしょう。

『B.A ミルク フォーム』は、美容液とひとつになった引き締め泡乳液です。乳液を泡で出すという剤形そのものが珍しかったこと、コロナ禍のマスク生活が間もなく終わるというタイミングでの発売で、もたつき・ハリのなさなどによる顔印象を気にするお客さまのお悩みはニーズに合っていたこと、プロモーションが成功したことなど、ヒットの理由はいろいろ挙げられます。

ペルソナに捉われず、外見だけでなく内面や生き方も美しくありたいという方々に届くようなコミュニケーションを追求

― ポーラほどの歴史と品格のある老舗ブランドが、新しい消費者に受け入れられる努力をされているのはすごいことですね。ところで大崎さんは、化粧品業界のトレンドをどのように捉えていらっしゃいますか。

多様化し過ぎて難しいというのが正直なところです。それにお客さまがどういう理由で、どういうきっかけで化粧品を購入されるのかは本当に人それぞれで多岐にわかれています。トレンドというよりも、マーケティング・コミュニケーションの難しさを感じています。特にコロナ禍あたりからは、スキンケアに時間をかける人が増えたり、普段は手に取らないブランドの化粧品をインターネットで購入される方が増えるなど、多様化が一気に進んだと感じています。

― 消費者クラスターを特定しにくいということですね。どうやってマーケティングをされているのですか。

日々悩んでいます。ペルソナを無理に作るのではなく、美容感度や美容リテラシー×美容投資レベルという軸を決めて、そこに入るブロックをいくつかつくるというイメージでしょうか。会社として明確なのは、年齢に捉われず自分なりの美しさを追求する方、外見の美しさだけでなく内面や生き方も含めて美しくありたいと思う方々にご使用いただきたいということです。

― デジタルマーケターとしての課題をどう捉えていらっしゃいますか。

私たちはお客さまとダイレクトにつながれるオウンドサイトを軸としたEC展開をしています。これは会社としての強いポリシーです。ですから基本的にはオンラインにおいても、お客さまとの直接のつながりを持っているわけです。ただ、ECモールでお買い物をされる方が増加していますので、そうした買い場の変化もオウンドECにとっては課題と捉えています。ECモールとの差別化として、オウンドECを従来のお買い物の場としてだけでなく新たなブランド体験の場へと進化させるため模索しているところです。そのためには、お客さまに喜ばれるコミュニケーションを適切なタイミングで届けていかなければなりません。

宇宙発想の新ブランドも発表。“憧れられるブランド”のイメージを広告やクリエイティブで打ち出していきたい

― 旬のトピックなどがあれば、教えていただけますか。

2020年9月に、「宇宙ライフを美しく快適に」をコンセプトとした「CosmoSkin」プロジェクトがポーラとANAホールディングスと共同でスタートしました。そのプロジェクトで開発された「コスモロジー スペースクルーキット」の国際宇宙ステーション(ISS)搭載が、まさに先日決定しました。2024年頃の油井亀美也宇宙飛行士のISS長期滞在中に使用される予定です。宇宙や地球の過酷な環境下でも、2ステップの簡潔・凝縮ケアできるという画期的なスキンケア用品です。そして日本初JAXA採用・宇宙発想のスキンケアブランド「コスモロジー」として、このキットと同じ内容物の単品「コスモロジー クレンジングウォッシュ」「コスモロジー ローションクリーム」を、来年1月に発売することが決定しています。

宇宙で使用できるというだけでなく、アウトドアシーンや、忙しくてケアに手間や時間を掛けられない方、あるいは非常時等にも使っていただける製品なので、新たなお客さまの取り込みにも繋がるのではないかと期待しています。

ポーラとANAがが共同開発したスキンケアブランド「コスモロジー」

― 最後に、デジタルマーケターとして、今後成し遂げたいこと、叶えたい夢があれば、お聞かせください。

ひとつは、「高価だけど、頑張った自分へのご褒美にポーラの化粧品を買おう」と思っていただけるような“憧れられるブランド”をつくっていくことです。私は実際のブランドづくりに携わっている人間ではありませんが、お客さまの目にふれる広告やクリエイティブの部分で、しっかりと打ち出していきたいですね。
もうひとつは、「初めてポーラの化粧品を使ってみたら、自分に自信が持てた」という方が増えてほしいと思っていますので、一人でも多くの方に製品を届けられるような仕事をしたいと思っています。

文:カソウスキ

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