ホーリー先生の外資系キャリア塾:成功の掟<年収アップ編> NEW
外資系ブランド業界で年収アップしていくためには、自身の今後のキャリアイメージやそれを実現させるための戦略、適切なタイミングでアクションを起こす判断力や決断力が必要となる。本記事では、さまざまな外資系ブランド企業に勤務し、転職によって年収アップを実現させてきたホーリーさんに、年収アップのための具体的な方法についてお話を伺った。
堀 弘人さん(ホーリー先生)/H-7HOUSE LLC 代表 | ブランド・マーケティングコンサルタント
独立系マーケターやクリエイターと連携する H-7HOUSE (エイチセブンハウス)を創設し、企業の経営課題や社会課題に対するブランド・マーケティング戦略を推進する。「PEOPLE BASED BRANDING®︎」 を提唱。人的資本を活かしたブランド構築を実践し、「人」を軸にしたブランド価値の最大化を支援する。外資系ブランドでマーケティングディレクターを経験し、日系上場企業の国際戦略部門にて、新規事業の立ち上げと短期間での収益化を実現した実績を持つ。ブランド戦略を経営視点で捉え、事業成長とブランド価値の最大化を両立させるコンサルティングを強みとする。
「転職」は、収入アップの大きなカギ
ー 外資系企業について、役職ごとの年収の目安はありますか。
企業や業種によっても異なりますが、一般的な外資系企業では、ノンマネージャーはは400万–800万円、マネージャーは800万–1200万円、ディレクターは1500万–2500万円、VPは3000万–5000万円、Cレベルは3000万–1億円程度だと言われています。求められる成果と責任が増すほど、それに見合った報酬が得られることになります。
ー 外資系企業での収入アップの方法といえば、まずは転職が思い浮かびます。どのようなステップから始めるべきですか。
近年ではLinkedInやなど、プロフェッショナル向けのSNSが活発です。個人的には、まずはLinkedInの活用は必須だと思いますね。特に外資系の人事担当者は、ほぼ100%が活用している印象を持っています。ちなみに私は、外資系企業の人事担当者は日本人でないケースも多いだろうと考え、自分の職務経歴をすべて英語で記載していました。
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ー まずはプロフェッショナル向けのSNSをしっかり作り込むことが大切なのですね。
はい。一方で、優良案件や特殊案件はその秘匿性からそういったSNSには載っていません。例えば、CEOを募集するような情報は、ほとんど世の中には出てきませんよね。そういった上級職の仕事の情報は、基本的にはクローズ。多くの場合は人材コンサルティング企業やヘッドハンターのみが持っています。
よって求職者はヘッドハンターとコミュニケーションを取り、良好な関係性を持つことも非常に重要です。またヘッドハンターも人によって得意・不得意のジャンルがありますし、持つ案件も異なります。複数人のヘッドハンターと、長年密に付き合う方が良いでしょう。
ー ホーリー先生は何社くらいのヘッドハンターとお付き合いされていたのですか?
私の場合、密に連絡を取り合うのは常時5社ぐらいでした。個人的にはプロフェッショナル向けのSNSよりも、ヘッドハンターを活用する方が、現実的に年収アップを実現しやすいと考えています。
ー 外資系企業への転職において、ネットワークは重要なのでしょうか。
外資系企業のコミュニティやネットワークは意外に狭いです。例えば「L社に勤めていた〇〇さんがG社に行った」など、噂は瞬時に広まっていきます。そのため、レピュテーションリスク(ネガティブな評判や噂によって自分の信用や価値が下がる危険性)には常に注意しましょう。
外資系での転職では、リファレンスチェックが行われます。外資系ネットワークの中で有用な自身の評判を作り、セルフブランディングを行うことは、とても重要なのです。
ー リファレンスチェックについて、もう少し詳しく教えてください。
リファレンスチェックとは、求職者のバックグラウンドや事実関係などを前職の関係者に問い合わせる調査のことを指します。また、転職の際にリファレンスレター(推薦状)を書いてくれる企業もあります。
例えば、私は欧州系企業を会社都合で退職する際、次の就職の際には前所属先の社長からリファレンスレター(推薦状)をいただきました。「ホーリーさんはこういう事情で退職していますが、スキル・人格において問題はなく、雇用において値する人材である。」という趣旨のものです。転職先も、数回の面接だけでは求職者の仕事のスキルや人格、コミュニケーション能力の判別は難しいですよね。リファレンスチェックでも否定的な意見が出ないことや、リファレンスレターなどを活用して自分の評判を整えることはとても重要なのです。
ー 人事担当者は、さまざまな方面から応募者の情報を得ているのですね。
応募者にどういうビジビリティ(市場での価値・人気)があるか、さまざまなツールで調べています。ですので、普段からメディアやSNSでの露出を意図的に増やしておくことも、自身の人材としての将来的な価値を高めることにつながるでしょうね。
ー ホーリー先生は、過去にはどのように年収アップの交渉をしたのですか?
私は以前、1回の転職で500万~600万円年収をアップさせたことがあります。仮に前職の年収が1000万だったとしても、自分の市場価値を基に適切な希望年収を伝えることで、交渉次第で大幅な年収アップが可能なのです。交渉は人材コンサルティング企業やヘッドハンターが担ってくれるケースも多くあります。
ー 大手よりも、小規模ブランド(企業)の方が狙い目なのでしょうか?
小規模ブランドの多くは、少人数でマネジメントしています。よって自分の実力、あるいは事業の成長次第では、大手の企業よりも上級の管理職に就くことができる可能性はあるかもしれません。
しかし、例えば同じ「マーケティングディレクター」という肩書きでも、大規模ブランドと小規模ブランドが全く同じ業務とは限りません。想定外のハンズオン業務をすることになった、という事態も考えられます。また、安定性や福利厚生に関しては大手に劣る場合もあります。成長性や報酬体系は充分に確認しましょう。
現在の企業で年収をアップさせたい場合は、具体的な成果を提示
ー では、現在の会社に留まりながら年収アップしていく方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
外資系企業で昇進し年収アップしていくには、四半期末や年度末の評価面談を活用します。その際は曖昧な心象評価ではなく、チームの中で自分がどういう役割を果たし、成果にどう貢献したのか指標化しておきましょう。議論の余地を挟むことなく評価がされるためです。
ー 部署異動やスキルアップは、年収アップにつながりますか。
例えば店舗勤務から本社の戦略部門やマーケティング部門への異動などは、収入増につながる可能性があるでしょう。またeコマース領域などは専門人材がまだまだマーケットに少ないこともあり、年収増による異動などの可能性があると言えます。
スキルアップについては、MBAや業界関連の資格取得が武器となるでしょう。またリスキリングについては、基本的に外資系企業では機会を持ちにくい印象があります。学歴や資格、経験値などは、既に持っている状態で入社するのが一般的なスタンスだからです。ウィークエンド型やオンラインで参加できるMBA、認定プログラムなどを利用する人は増えているようですね。
今は、AIを活用すれば誰でも英文が書ける時代です。語学力については、文書作成や文章のやり取りという範囲においては差別化の要因にはなりにくくなってきたと個人的には感じています。今後は、与えられているジョブで経験や人的スキルをどう発揮できるかの方が、強みとなるでしょう。
ー 持っておくべきマインドやスタンスがあれば教えてください。
私が米国企業に勤めていた頃に言われた言葉に“Be nice to everyone”というものがありました。「皆に対してオープンで、前向きな人でいる」「意図的に対立構造を作らない」といった根本的な事柄が、自身の昇進や昇給に関わるという意味です。外資系ではあなたの部下が、いつ自分の上司になるかわからないからです。転職にも昇進にも言えることですが、外資系という狭いコミュニティにいるからこそ、余計に良好な人間関係は重要です。
ー 最後に、転職や昇進以外で年収をアップさせる方法があれば聞かせてください。
例えば、ストックオプションを持つことはひとつの方法です。特にベンチャー企業では、一攫千金につながる可能性もあるでしょう。ただ、ある程度、勤続年数を重ねないとその効力を発揮しないケースも多いので雇用契約の際に条件は確認しましょう。また外資系企業においても、副業を認めるケースが徐々に増えてきています。何かしらの方法で副収入を得るという選択肢は排除すべきでないかと思います。
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文:梅原ひかる