1. HOME
  2. 最新ニュース&インタビュー
  3. ホーリー先生の外資系キャリア塾:成功の掟〈 “Why Me?”を問え。自己分析編〉【前編】

JOURNAL

ホーリー先生の外資系キャリア塾:成功の掟〈 “Why Me?”を問え。自己分析編〉【前編】

ホーリー先生の外資系キャリア塾:成功の掟〈 “Why Me?”を問え。自己分析編〉【前編】 NEW

外資系企業の求人では、ひとつのポジションに20〜30人の応募が殺到することもめずらしくない。「スキルや経験は十分なはずなのに、なぜ書類選考で落とされるのか」「面接で自分の強みをうまく伝えられない」と悩む方も多いのではないだろうか。ホーリーさんは、「自己分析をしっかりと行い、『なぜ自分なのか(Why Me?)』を明確にできれば、企業側が求めるポジションと自分の強みが一致し、転職が成功する確率を高められます」と言う。【前編】では、自己分析の目的や行う際のポイントについて解説していただいた。(前回の「年収アップ編」はこちらからご覧ください)

堀 弘人さん(ホーリー先生)/H-7HOUSE LLC 代表 | ブランド・マーケティングコンサルタント
独立系マーケターやクリエイターと連携する H-7HOUSE (エイチセブンハウス)を創設し、企業の経営課題や社会課題に対するブランド・マーケティング戦略を推進する。「PEOPLE BASED BRANDING®︎」 を提唱。人的資本を活かしたブランド構築を実践し、「人」を軸にしたブランド価値の最大化を支援する。外資系ブランドでマーケティングディレクターを経験し、日系上場企業の国際戦略部門にて、新規事業の立ち上げと短期間での収益化を実現した実績を持つ。ブランド戦略を経営視点で捉え、事業成長とブランド価値の最大化を両立させるコンサルティングを強みとする。

外資系キャリア転職の成功を決める自己分析法

転職活動における自己分析とその目的について教えてください。
転職は人生における大きな選択です。「待遇がいいから」「企業・ブランドが魅力的だから」という理由で転職先を決める人も多いですが、それだけでは入社後にキャリアの方向性を見失ってしまうリスクがあります。ただ、きちんと自己分析を行うことで、そうしたリスクを軽減し、最適なキャリア選択ができるようになります。

転職における自己分析とは、端的に言うと「自分をブランドと見立て差別化要因を整理すること」。企業側が求める価値と自分が提供できる価値を一致させ、自分にとって最適な未来を掴むために必要な戦略的なプロセスのことです。

そのため、単に「自分の強みや弱みを把握する」「スキルや経験の棚卸しする」だけにとどまらず、どう自分を評価し、それを明確に伝え、相手の記憶に残すかが大切です。

有名な外資系企業の場合、ひとつのポジションに対して20〜30人の応募者がいることがよくあります。勝ち抜くためには、「自分というブランドをどう評価し、そして会社にどう貢献できるのか」を定量、定性の両視点から明確に示すことが求められます。

自己分析を行う際に大切な3つのポイント

自己分析を行う際、どんなことに気をつければいいでしょうか。
自己分析のポイントは、大きく3つあります。

1. 自分の市場価値を正しく理解する
2. 適切な業界・企業選びを行う
3. 効果的に面接官の記憶に残す

ひとつずつ解説していきましょう。

1.自分の市場価値を正しく理解する
転職活動は、5年後、10年後、15年後の自分を想像する重要な機会でもあります。自分のスキルや経験が、どの業界・企業でどのように評価されるのかを理解することで、無理のない転職戦略を立てることができます。

例えば、私は業界最大手の米系スポーツブランドから仏系宝飾ブランドに転職した経験があります。一見まったく異なる業界に見えるかもしれませんが、スポーツブランドで関わっていた若年層に向けたクリエイティブ志向のマーケティング経験が、まさに現代のラグジュアリーブランドが求める洞察であるとの仮説をもとに自己分析し、他業界への転職に成功しました。

2.  適切な業界・企業選びを行う
転職後で最もつらいのは、「思っていた企業と違った」という入社後に起きるミスマッチではないでしょうか。多くの人はスキルセットや経験値の棚卸しは行いますが、企業文化や自分が貢献できる領域、人間関係といったカルチャーフィットの分析まではあまり行っていません。

特に外資系企業の場合、即戦力採用がほとんどで、引き継ぎなしですぐに仕事に携わることもよくあります。そんななかで、自分がどう組織に貢献できるのか、コミュニケーションをとる相手はどんな人なのか、海外本社チームとの連携はどのようにとっているのかを事前に明確にしておくのは重要でしょう。

3.効果的に面接官の記憶に残す
外資系企業の場合、面接時間は通常60分です。場合によっては20分や30分という短い時間で、自分の価値を伝えなければなりません。

以前、私が採用側の立場で感じたのは、自己分析がしっかりとできている人には最初の5~10分で惹きつけられるということ。なぜなら、自分のブランドポジショニングや強みを明確に理解し、企業にとってどんな価値を提供できるのかを端的に説明できるからです。つまり、「なぜ自分なのか(Why Me?)」が研ぎ澄まされているのです。

これは、面接官へ非常に良い印象を与えることができます。求人倍率が高いポジションの面接は、大勢から一人を選ぶ必要があるため、どうしても記憶に残る人は限られますからね。「なぜ自分なのか(Why Me?)」が明確な人は、他の求人者との競合優位性もわかりやすく、選考の通過率アップにつながります。

「2.  適切な業界・企業選びを行う」で、志望者側はカルチャーフィットをどのように見極めたらいいのでしょうか。
面接担当者は基本的にポジティブな面のみを語りますから、その情報だけで見極めるのは非常に難しいです。ただ、具体的な質問から組織のカルチャーを推測するという方法はあります。

例えば「マーケティング部門で勤続10年以上の方は何割程度いますか?」と質問し、「8割以上」という回答を得られたとしましょう。人が定着していて働きやすい環境であるとイメージできる一方で、イノベーションや新しい考え方が生まれにくい組織かもしれないとも推測できます。そしてこのような環境に外部からの変革者が入ると、組織との間に摩擦が生じやすい可能性もあります。

同じようにチーム内の人材構成、コミュニケーションの特徴、組織文化の特性について質問することが重要です。どのような部下と働くのか、直属の上司がどのような人物なのか、海外本社との連携はどれくらいの頻度なのか。入社後に一緒に働くメンバーの人物像を面接段階で可能な限り明らかにしておくことで、入社後のミスマッチをある程度防ぐことができます。

当然ですが、完璧な会社は存在しません。自分にとって「どんな会社で働きたいか」と同じくらい、「こういう会社は自分には合わない」という軸を明らかにしたうえで、先述のような質問をし、自分が受け入れられる環境かどうかを見極めることが重要です。

ホーリー先生は、「なぜ自分なのか(Why Me?)が明確な人は、他の応募者との競合優位性もわかりやすく、選考の通過率アップにつながります」と話す

自己分析の盲点。定量化できない価値にも目を向ける

自己分析で、多くの人が見落としがちなポイントは何でしょうか。
定量的な部分だけで自己分析をしてしまう点です。よくあるのが、「A社で人事の仕事をしていて、離職率をX%下げました」といった、会社での役職や実績だけを並べるだけで終わってしまうパターンです。

しかし、企業が本当に見たいのは、そういった定量化できる経験だけではありません。文化的な柔軟性や、ストレス耐性、非認知スキルといった定量化が難しい部分です。

例えば「大人数の会議でうまく立ち回れるか」「複雑なプロジェクトで複数のステークホルダーを管理できるか」といった、数値化しづらい能力です。コミュニケーション力や、非認知スキル、信頼関係を築く力など、職務経歴書には書かれていない部分を企業は重視しています。

そのため、「私はこういう人間で、こういう環境ではこのような立ち回りができます」「納期が迫ったプロジェクトでは、このように対応できます」「顧客からはこのように信頼を勝ち得てきました」といった、定量化しづらい部分をどう自己評価し、伝えるかが重要になってきます。

定量化しづらい要素を分析するための方法はありますか。
マーケティングでは、SWOT分析というよく知られたフレームワークがあります。Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)という4つの視点で分析するものです。これを自己分析に応用します。

特に面接では必ず「あなたの強みは何ですか」と聞かれます。その際、単なるスキルの列挙ではなく、「なぜそれが強みといえるのか」「どのような場面でその強みを発揮できるのか」まで考えておく必要があるでしょう。

またSWOT分析のほかに、STP分析(セグメンテーション〈Segmentation〉、ターゲティング〈Targeting〉、ポジショニング〈Positioning〉)という基本フレームワークもあります。こちらも自己分析や転職活動をするうえで効果的であり、より体系的な分析が可能です。

次回の後編では、STPを活用した自己分析の手法や自己分析で陥りがちなポイント、さらには客観性を保った自己分析の方法について、具体例を交えながら詳しく解説していきます。

文:金井みほ

SNSでこの記事をシェアする