【イベントレポート】フィリップ モリス ジャパンが描く次世代リテール戦略の核心 NEW

NESTBOWLではフィリップ モリス ジャパン合同会社のダイレクト チャネルズ部門のリーダー陣の4名を迎え、リテール企業関係者に向けたトークイベントを開催した。テーマは「フィリップ モリス ジャパンが描く次世代リテール戦略」。同社が掲げる「煙のない社会」というビジョンのもと、フラッグシップストア、飲食店・イベントなどでのタッチポイント、またショップインショップといった多様な販売チャネルで、どのように加熱式たばこデバイスのエンゲージメント向上を図っているのかを聞いた。
■イベント登壇者
ルイス グリーコさん/ダイレクト チャネルズ ディレクター(写真:左)
髙橋 宏さん/コンシューマー エンゲージメント ディレクター(写真:中央左)
町田 勇次さん/ブランド リテール マネジャー(写真:中央右)
八木 崇文さん/ニュー リテール チャネルズ マネジャー(写真:右)
■モデレーター
田崎 直人/NESTBOWL株式会社 代表取締役
サービスからホスピタリティへ役割が変化
― まず、企業ビジョンとして掲げている「煙のない社会」とはどのようなものなのか、お聞かせください。
ルイス グリーコさん(以下、ルイス):フィリップ モリス インターナショナル(PMI)は2014年に伝統的な紙巻たばこのビジネスから加熱式たばこへと事業の舵を切り、「煙のない社会」の実現をビジョンとして掲げています。具体的には「2030年までに世界におけるPMIの純売上の三分の二以上を煙のない製品から得る」ことを目標にしています。
当社の方針は、喫煙を続ける意思のある20歳以上の喫煙者に、紙巻たばこから加熱式たばこへの切替えを推奨し、より良い選択肢を提供することです。ただし、代替製品にもリスクはあります。最も望ましいのは、非喫煙者は吸わないこと、喫煙者は禁煙することです。
― この10年間で20歳以上の喫煙者の関係性やエンゲージメントはどのように変化してきたのでしょうか。
ルイス: 20歳以上の喫煙者へ提供する価値の重点が、サービスからホスピタリティに転換しています。2014年の発売当時、フラッグシップストアである「IQOSストア」の業務は製品の修理やクリーニングが中心でした。しかし現在では製品の品質が向上し、フラッグシップストアは不具合を直す場所ではなく、滞在価値を提供する場所として機能するようになりました。
その結果、フラッグシップストアにおけるNPS(ネット・プロモーター・スコア:ロイヤリティを評価する指標)は改善し、20歳以上の喫煙者のリピーターは増加しています。
― 素晴らしいですね。リテール戦略を考える上で重視されていることは何でしょうか。
ルイス:ご存知のように、たばこ業界は規制が厳しく広告活動が限られるため、口コミが最大の宣伝となっています。ブランドのエンゲージメントを高めるためには、どのチャネルにおいても、一人ひとりのスタッフが製品やブランドのコアバリューを理解し、それぞれの場所で20歳以上の喫煙者に正確に情報を伝えることが大切です。そのためにはトレーニングが最も重要な要素の一つであると思います。

進化するブランド体験の裏側
―この10年で紙巻たばこから加熱式たばこへの切替えが進み、加熱式たばこの利用シーンは広がってきているかと思います。そんな中で、御社は20歳以上の喫煙者における体験をどのように広げていったのでしょうか。
髙橋 宏さん(以下、高橋): 2020年4月の健康増進法改正によって飲食店での喫煙環境が大きく変わり、飲食を伴いながらの喫煙が原則禁止となりました。法律の経過措置に則って、喫煙室を加熱式たばこ専用喫煙室に切替えている店舗が多いです。
加熱式たばこ専用室、フロア分煙を設けている飲食店では、飲食などを行いながらの加熱式たばこの使用が認められていることもあり、限られた空間でブランド体験を高めるために様々な施策を行っています。
― 2024年からスタートした「IQOS TOGETHER X」についてもぜひお聞かせください。
高橋:「IQOS TOGETHER X」は、20 歳以上の喫煙者を対象に、ブランドの世界観を体験してもらうエンゲージメントプラットフォームです。「想像を超える感動体験」をテーマに、様々なキャンペーンを提供しています。
同時に、夏場の音楽フェスにも参画しています。真夏の屋外の会場にラウンジを作り、空調の効いた空間でブランドの世界観を体験し、様々な参加型の体験コンテンツを通じ感動をお届けしました。目玉はアーティストのバックステージツアーです。まさに“想像を超える感動体験”を提供することで、20歳以上の喫煙者はもちろん我々も感動を共有しました。 こうしたキャンペーンは一方的な情報発信では成り立たず、双方向のコミュニケーションが不可欠です。そのため、ブランドアンバサダーと呼ばれるスタッフが20歳以上の喫煙者に直接価値を共感できるよう、積極的に情報発信を行いました。

フラッグシップストアが担うプレミアムな体験価値
― フラッグシップストアである「IQOSストア」では、どのように体験価値を提供しているのでしょうか。
町田 勇次さん(以下、町田):現在、フラッグシップストアは札幌、銀座、心斎橋、名古屋の4店舗で展開しています。20歳以上の消費者の購買意思決定の多くが、店内でブランドあるいは製品を体験してから行われると言われているので、店舗での体験を非常に大切にしています。
具体的には3つの柱があります。まず一つ目は喫煙スペースです。原則としてフラッグシップストアはフロア全体が加熱式たばこ専用の喫煙スペースです。二つ目は店内のカフェスペースです。20歳以上の喫煙者の皆様に、ドリンクを提供しています。三つ目はカスタマイズです。デバイスとのセット商品を購入いただいた方に、お名前の刻印やプリントを行っております。
― ここまで充実した体験価値を提供している狙いはどこにあるのでしょうか。
町田:店舗での体験を通してブランドイメージ、ロイヤリティを向上することです。単純にたばこ製品を使ったりコーヒーを飲んだりするだけでなく、プレミアムなブランド体験を提供する場所でありたいと思っています。

生活導線に寄り添った店舗展開で地方での認知を拡大
― 全国にあるショップインショップは、御社の中でどのような位置づけにあるのでしょうか。
八木 崇文さん(以下、八木):加熱式たばこデバイスは大都市で広く知られているのですが、地方での認知度はまだ十分ではありません。そうした方々にIQOSをはじめとした加熱式たばこデバイスを知っていただくこと、そして20歳以上の既存の喫煙者の皆様のサポートをすることがショップインショップの役割です。そのため、銀座や心斎橋のような繁華街ではなく、家電量販店やディスカウントショップなど、20歳以上の喫煙者の生活圏に近い場所に出店しています。
― では、ショップインショップでも20歳以上の喫煙者との直接的なコミュニケーションを大切にされているのですね。
八木:そうですね。正しい製品説明でブランド価値を向上したり、20歳以上の喫煙者からフィードバックをいただいたりできる点が、コンビニとは異なるオフラインチャネルとしての存在意義であり、最大の強みです。20歳以上の喫煙者自ら店舗に足を運んでいただき、体験して、感想を率直に伝えていただくことが、我々の成長につながっています。

20歳以上の喫煙者に焦点を当てた顧客中心アプローチを支える「組織」と「人」
― 各チャネルの責任者である皆さんが、リーダーとして大切にされていることは何ですか。
高橋:どのチャネルでも共通して重視しているのは、やはり20歳以上の「喫煙者(顧客)」ではないでしょうか。20歳以上の喫煙者がどういう状況なのか把握し、相手に合わせたコミュニケーションをとることを大切にしています。例えば私が携わっている飲食店でも、アンバサダーが20歳以上の喫煙者に製品を紹介する際、相手が加熱式たばこデバイスをよくご存知の方か、否かを見極めて対話するようにしています。
― 20歳以上の喫煙者に焦点を当てた顧客中心アプローチを徹底するため工夫していることはありますか。
高橋:チーム全体で「ワンスピリット、ワンチーム、ワンミッション」というスローガンと直接コミュニケーションして情報収集していく姿勢を意識しています。「ワンスピリット」とは常に20歳以上の喫煙者を軸にしたコンシューマーセントリックの目線、「ワンチーム」はそこで得られた情報、インサイトをチームや関係各署に共有すること、「ワンミッション」は、市場を牽引する存在であることに誇りを持ち、自分たち自身がブランドの一部として魅力的であろうという意識を意味しています。
文:大貫翔子
撮影:船場拓真