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才能にあふれた輝く女性たちに称賛と支援を—ブルガリが大切にするジェンダー・イクオリティー|ブルガリ ジャパン 代表取締役社長 ウォルター・ボロニーノ氏

才能にあふれた輝く女性たちに称賛と支援を—ブルガリが大切にするジェンダー・イクオリティー|ブルガリ ジャパン 代表取締役社長 ウォルター・ボロニーノ氏

3月8日国際女性デーに、「ブルガリ アウローラ アワード 2022(BVLGARI AVRORA AWARDS 2022)」の発表会見が行われた。今年で6回目を迎える「ブルガリ アウローラ アワード」は、日本の女性たちにインスピレーションの光と輝きの連鎖を届けるというビジョンのもと、想像力と知性と才能にあふれた輝く女性とその取組みを称賛し、支援することを目的に2016年の国際女性デーに創設された。「ブルガリ アウローラ アワード」の功績は、日本社会におけるジェンダー・イクオリティーを進めるための一つの道しるべとなっている。今回は「ブルガリ アウローラ アワード」を日本において牽引する、ブルガリ ジャパン代表取締役社長 ウォルター・ボロニーノ(Walter Bolognino)氏にご登場いただき、ブルガリの魅力や「ブルガリ アウローラ アワード」についてお話を伺った。

ウォルター・ボロニーノ(Walter Bolognino)氏ブルガリ ジャパン株式会社 代表取締役社長
ローマのルイス(LUISS)大学を卒業後、大手自動車メーカーでマーケティング コーディネーターとしてキャリアをスタート。2004年にブルガリ本社にジュエリー ビジネスユニットのプロダクトマーケティング スペシャリストとして入社。その後プロモーションスペシャリストを経て、マーケティングマネージャーに任命される。2010年リテールカスタマーリレーションシップマネージメントマネージャーに就任後、2013年にはデジタル分野へも担当を拡げる。2014年に来日し、ブルガリ ジャパン マーケティング&コミュニケーション ディレクターに就任。日本におけるマーケティング活動を統括し、2017年1月、ブルガリ ジャパン社長に就任。

ブルガリに対する情熱を持ち続けて

―まずはウォルターさんのキャリアについてお伺いできればと思っております。前職からブルガリへ転職され、それから現在まで約18年、ブルガリにいらっしゃいますね。 

実は、前職で働くよりも前に、一度ブルガリで面接を受けていたのです。大学で取得した学位を活かしてプラクティカル(実務的)な仕事に就きたいと考え、幼いころから憧れていたブルガリに最初にアプローチをしました。そのときは残念ながら選ばれることはありませんでしたが、前職で働いているうちに、やっぱり自分が一番好きなブランドで働きたいと考えるようになりました。

私は幼いころからブルガリに対して情熱を持っていました。それはブルガリというブランドが、イタリアのなかでももっとも望まれるブランドであるということ、そしてイタリアニティ(=イタリアらしさ)を表現するブランドだからです。過去に一度、ラッキーなことに家族とともに、とあるブルガリのイベントに出席する機会がありましたが、そこで感じたのはまさにイタリアニティ。それは喜びや色彩、歴史、ローマ帝国といった、多くのセレブリティや映画業界が憧れるものであり、そのころからブルガリで働くことは私の夢でした。

ブルガリをはじめとするラグジュアリーワールドの魅力は、ブランドでお買い求めになるお客様のほとんどが、その“もの”の値段ではなく、ブランドの歴史や背景、スタッフとの会話など、そういったところにバリューを感じているという点です。

―転職によって幼いころの夢がかなったのですね。

はい。私がブルガリに入ったころというのは、まだLVMHの傘下に入っていないファミリー企業のころで、当時を表現するならば、まるで毎日花火を打ち上げているような感じでした。新しいアイデアが日々次々と生まれ、その素晴らしいアイデアを実現する、素晴らしい会社でした。のちにLVMHの傘下に入り、そうした素晴らしいアイデアが生まれる現場にLVMHが持つプロフェッショナルなマネジメント体制が加わり、さらに素晴らしい環境へと生まれ変わったのです。

私がブルガリのもっとも好きなところ、それは昔も今も変わらず、自分たちが持つアイデアを展開して発展できるところです。アイデアを実現するお金があるといった話ではなく、まず生まれるアイデアが素晴らしいこと、そしてそれを人へ伝えて動かしていく企業精神です。もう一つは、これこそがブルガリの特徴でありますが、多くの可能性を与えてくれるという点です。多くの学びや刺激がある素晴らしい環境のなかで、自分自身の可能性が広がり、チャレンジが成功したあかつきには次のチャレンジも用意されている。このようなチャレンジを続けることで自己成長にもつながります。私が約18年、ブルガリで働き続けることができている理由のひとつは、常にまわりに自分より何らかの点で優れた人々に囲まれているからだと思います。多くの刺激を受け、学ぶ機会があるのです。自分の可能性を常に最高地点に持っていきたいという思い、それこそが私の仕事のモチベーションになっています。

幼いことから抱いていたブルガリへの想いや情熱は今になっても変わらない

“喜び”のモーメントを受け継ぐ、ブルガリのビジネスの本質

―まさに、ウォルターさんの考えとブルガリのフィロソフィが合致しているようです。

私が思うブルガリの本質というのは、まさに“JOY(=喜び)”だと思います。私はいかに我々が携わっているビジネスが素晴らしいものか、いつもオフィスで話しているのですが、私たちのお客様がブルガリの店舗にお越しになる時というのは、そのお客様の人生において、何らかの素晴らしい出来事があるからお越しくださるのであって、その素晴らしい瞬間を私たちが “もの”や“体験”に置き換えることで、永遠に残り受け継がれていくお手伝いをしているのです。そういった喜びのモーメントこそが、我々に共通するフィロソフィなのだと思います。ハッピーである今の状況に喜びながらも、決して満足しきらないという、二つのバランスがまさに我々を前進させるエネルギーになっています。

―ウォルターさんの言葉には、仕事に対する信念というものを感じます。18年間、その信念はブルガリの思いとともに変わらないものだったのでしょうね。

おっしゃるとおりで、変わらないと思います。我々が会社の中で大切にしていること、これは本社のHRディレクターが各国に話していることですが、社内においてBefore you(=このポジションに就く前のあなた)とAfter You(=このポジションに就いてからのあなた)を大切にしなさいということです。つまりは何か自分の仕事を通じて、会社にあなたの功績となるエレメントを残しなさいということ。それは、どれだけその社員が会社に貢献したのかという証明になるのです。私自身のキャリアを振り返ってみたときも、ポジションが変わるタイミングというのは何かしらの重要なマイルストーンを達成することができたときでした。長く会社にいればいるほど貢献できるレベルも高くなっていきますが、より大きな成果を出すには、周りを巻き込みコレクティブに取り組むことが大切だと考えています。

こうやってお話をしていると、まるで私が素晴らしい毎日を過ごし、順調に歩んでいるように見えるかもしれませんが、そんなことはもちろんありません。良いときもあれば、そうでないときも多くありました。それでも私は、良くない方向にいったときに、「自分にとって何がハッピーなのか?」と、問いかけるようにしています。自分に必要なエネルギーを取り戻すために、自分にとって何がハッピーなのか考えると、たとえ相性があまり良くない人と一緒に働くことになったとしても、何かしらの学びを得られるのです。そう考えることで、ポジティブに仕事と向き合うことができます。

―たとえば今までどのような苦難があり、その苦難をどう乗り越えてきたのでしょうか?

以前、自分が取り組んでいる仕事に満足できず、「自分はもっと別のところで会社に貢献できるのでは」と悩んでいたことがありました。それを上司やHRに伝えたところ、その声が最終的にCEOまで届き、新たにCRMのプロジェクトにチャレンジすることになったのです。大きな喜びとプレッシャーのなか、プロジェクトを成功させたい一心で提案をまとめ上げ、CEOにプレゼンしたところ、そのプロジェクトはラグジュアリー業界におけるCRMの参考となるような高いレベルにまで仕上げることができました。こうしたエネルギー源は結局自分がハッピーであるということ、そしてすべてのことに満足しきらないということです。これが基本だと私は考えていて、やはりハッピーであることは自分の自信にもつながりますし、プラスのエネルギーをもたらしてくれます。そして満足しきらないということは、もっと自分はやれるのだという強い意志になる。この二つのエネルギー源があれば、どんな困難でも乗り越えられると思うのです。

ブルガリ ジャパンが考える日本でのビジョン

―現在のブルガリ ジャパンのビジョンについて教えてください。

私が来日することを決めたのは、ラグジュアリーというものが日本という国で非常に高いレベルで理解されていると思ったからです。ラグジュアリーというのは、ただ単に目で見て触れて感じたり、口で味わったり、それだけではなくて、そこに感じるものや、その商品の裏側にあるストーリー、それらが日本では深く理解されていると思うのです。日本の “もの”に対する本質の理解やクラフトマンシップを大切にするところというのは、ほかのどの国を差し置いても優れていると感じています。だからこそ私はこの日本で学びたいと思い、日本に来ることを決めたのです。

たとえば、良い車に乗っている人がいて、それを見た人々というのは、その人物が何かを成し遂げた人、あるいは何か重要な人だと感じられると思うのではないでしょうか。同じように、ブルガリを身に着けている人を見たときに周りの人々が「この人は成功した人なんだ」「幸せな人なんだ」。あるいは「社会に何か貢献するような立場の人なんだ」と、そう感じてもらいたいのです。それこそがブルガリというブランドの価値だと思いますし、ブルガリを求めてくださる人々にとっての主たる理由になればいいと考えています。我々はイタリアのトップのブランドとして、日本市場において“もっとも望まれるブランド”でありたいと考えています。

日本の“文化”や“もの”に対する考え方は、ブルガリの哲学に通ずるものがある

女性が活躍できる環境をつくるために欠かせないサポート精神

―ブルガリは「ブルガリ アウローラ アワード」をはじめ、多くの女性たちをサポートする活動に注力されています。そして、実際にブルガリでも多くの女性たちが活躍されていますね。

我々は、ジェンダー・イクオリティとダイバーシティに重きをおいており、女性も重要な存在です。また我々のビジネスは幅広い女性顧客の方により成り立っており、多くの女性が働いています。(※ブルガリの従業員のうちの75%が女性であり、管理職のうち65%が女性)。女性が活躍できる環境をつくるには、結婚や出産などのさまざまなライフスタイルの変化をサポートすることがとても重要だと考えています。多くの女性が直面する問題を解決することというのは結局、その女性のみならず、そのパートナーや一緒に働く我々、そして会社にとっても大きな恩恵があると思うのです。さらに、日本社会に対しても大きなインスピレーションを与えることができると考えます。

―人材開発において大切にしていることとは?

大切なのは、まずそれぞれの人材が持つ才能に気づき、認識するということです。私たちはそれぞれが持つ能力が発揮され、そして強化できるよう、社内でさまざまなトレーニングプログラムやプロジェクトを実施しています。このプログラムはもちろん店舗のスタッフだけではなく、オフィス勤務のスタッフも対象で、いわゆるクライアントテリングのようなものからマーケティングに関するものまで、さまざまなバックグラウンドを持つ人材同士が関わり、異なるアングルで物事を見て、明確で率直なフィードバックを与え合う機会です。コレクティブ インテリジェンス(集合知)を活かすことで、互いのキャリアジャーニーがより豊かになり、それは職務上だけでなく、一個人としても大きな成長につながると考えています。

―それにはよりオープンなコミュニケーションが必要になりますね。

可能な限りそうですね。オープンなコミュニケーションがなければ相互理解もないですし、互いを信頼し合うことも困難です。そのような信頼関係のもと考えると、互いのフィードバックというのは、むしろギフトだと思うのです。誰かのことを大切だと思うならば、自分の考えを伝える必要があると思います。そしてフィードバックを与えられた側は、すべてを変える必要はないけれども、しっかりとオープンな心で受け入れ、何かできることはないかと考えることが大切です。

私たちは社内のソーシャルメディアとして、アイデアジェネレーターというものを使っているのですが、たとえば「○○に課題があるけど良い解決策はないか?」というような内容を投稿すると、社員全員が見ることができ、そこから良いアイデアを受け取ることができるものです。良いと思ったアイデアに一票を投じることができ、そこで集まったトップ10のアイデアを洗い出して各ファンクションでしっかりプレゼンまでもっていくような機会を作ることもあります。そのようにアイデアを厳選し、それを実行に移すといったことを繰り返すのです。こうしたツールも活かしながら、社員全員の貢献によって会社がさらに成長する形を目指しています。

もちろんトレーニングは成長のためのツールとして大切だと考えていますが、まずはそのひと本人がプロアクティブ(積極的)であるということが大切だと私は考えています。「これをやったら」と言われても、それが必ずしも自分がやりたいことじゃなければ、意味がありません。自分自身で改善した方が良いと感じることがまず必要で、それに対して会社としてのサポートはできますが、そこからさらに成長できるかどうかというのは、結局その人次第だと思うんです。一番大切なのは本人がそれをやる姿勢があるかどうか、積極性があるかというところだというふうに思います。

「ブルガリ アウローラ アワード」が届ける、女性のエンパワーメント

―「ブルガリ アウローラ アワード」の2022年度の記者会見が先日の国際女性デーに行われましたね。女性を称賛するイベントとして、今回で6回目を迎えます。

「ブルガリ アウローラ アワード」は現代社会で女性が果たす役割を讃えたいという願いからスタートしました。私がもっとも好きなプロジェクトであるこの「ブルガリ アウローラ アワード」には、二つの重要な役割があります。一つは、いかにこのアワードを実施することで、ブルガリで働く人材にバリューをもたらせるかということ。ブルガリというブランドを通し、そこで働く人間として社会に貢献しているということを認識できる良い機会であると考えています。もう一つは、我々のブランドというのはいつの時代も素晴らしい女性たちから多くのインスピレーションを受けてきました。本アワードを通して、そうした素晴らしい女性たちに光を当てることで、さらに多くの人々にインスピレーションを与え、ジェンダー・イクオリティーの実現につながることを目指しています。

2022年3月8日「ブルガリ アウローラ アワード」国際女性デー 記者会見での一枚。本アワードの2021年度受賞者 和田アキ子さん(歌手)、2022年度受賞者 米倉涼子さん(俳優)、2018年度推薦者 林陽子さん(弁護士)

―「ブルガリ アウローラ アワード」を日本発ではじめた理由とは?

私が日本に来て感じたのは、たくさんの女性たちが自分の持つ才能をうちに秘めていて、外へシェアしていないということでした。「ブルガリ アウローラ アワード」のようなプロジェクトは、日本でこそポジティブな効果があるのではないかと思いました。日本は残念なことにジェンダー・イクオリティーが進んでいない国でもありますので、それを進めていく意味でも、本アワードが日本社会のジェンダー・ギャップをなくす一つのきっかけとなればと考えています。日本社会に貢献するためにも、ブルガリというアングルから世の中にメッセージを伝えることが必要だと考えたのです。 

日本から始まった「ブルガリ アウローラ アワード」は今ではさまざまな国で開催されるようになっている

―最後に、どんな未来をつくりたいか教えてください。

私はダイバーシティ(=多様性)というものを信じています。異なった経験やバックグラウンドを持つ人々が集まり、一つのゴールに向かって考え、ソリューションを生み出すことは、一人でやるより以上に良いものが生み出せると思うのです。日本社会の素晴らしさは、人と人が協力し合うこと。そういった意味でも、ダイバーシティな社会を実現するのに日本はベストな国だと思っています。そして、それを実現できるかどうかというのは、結論、我々一人ひとりの行動にかかっているのだと思います。

※2022年5月にウォルター・ボロニーノ氏は代表取締役社長を退任しており、現在はヴィンセント・ライネス氏がブルガリ ジャパン株式会社 代表取締役社長に就任しています。

撮影=Takuma Funaba

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1884年創業以来130年を超える歴史を持つ、
イタリアの宝飾品ブランド「ブルガリ」。