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パリ現地レポート!「インテリア業界のパリコレ」と呼ばれる展示会から見えたJAPANブランドのポテンシャルとは?

パリ現地レポート!「インテリア業界のパリコレ」と呼ばれる展示会から見えたJAPANブランドのポテンシャルとは?

パリで毎年2回開催されている世界最高峰のライフスタイルとデザインの国際展示会「メゾン・エ・オブジェ(Maison&Objet)」が、2023年1月19日~22日までパリ郊外のパリ・ノール・ヴィルパント見本市会場で開催された。2023年の開催では、ここ数シーズン出展を見合わせていた代表ブランド「Les Héritiers」「Seletti」なども戻り、注目を集めた。また3年ぶりに日本ブースも復活。エイチセブンハウス代表 でNESTBOWL ブランドディレクターも務めている堀 弘人氏もメゾン・エ・オブジェに来訪。会場で見たことや現地で感じたことを堀 氏に直撃インタビュー!現地ではJAPANブランドはどのように評価されているのか。また現地で感じ取った空気感などの見聞を語っていただく。

堀 弘人さん/H-7HOUSE合同会社 CEO・ブランドコンサルタント
米系広告代理店でキャリアをスタートさせ、アディダス、リーバイス、ナイキ、LVMHなど世界的に業界をリードする数々の外資系ブランドでマーケティングディレクターを含む要職で活躍したのちに、大手日系企業 楽天にてグローバルビジネスディレクターとして活躍。2021年、自身の経験を国内外企業の活性に役立てたいとブランドコンサルティング会社H-7HOUSE(エイチセブンハウス)を設立。国際的な経験を礎としたブランディングとマーケティング戦略を専門としている。

欧州最大級の規模を実感。メゾン・エ・オブジェは、インテリアデザイン業界全体の巨大プラットフォームだ。

― 今回「メゾン・エ・オブジェ」に訪れた経緯を教えて下さい。

私が経営しているブランディング会社では、日本企業や伝統産業を海外でPRするもしくはブランド作りをするコンサルティングをしています。今回メゾン・エ・オブジェに参加した経緯は、兵庫県神戸市の〈神戸レザー協同組合〉を海外でPRするためです。

神戸レザー協同組合は、世界的ブランドでもある「神戸ビーフ(神戸牛)」の原皮の有効活用と皮革の新たな付加価値の創出を図るため設立された組合で、食肉で使用されていたお肉の副産物をレザーにする取り組みを行っています。具体的に言えば皮の部分は今までは、産業廃棄物で全く利活用されていなかった。「神戸ビーフ」の牛の皮革も使うことができないだろうか。そんな日本人の<もったいない精神>から副産物を活用していきましょうという想いで神戸レザーのブランド化を目的として設立されました。

神戸レザー協同組合の出展ブース。中央が堀 弘人氏。4日間多くのビジターに対応した。

― 今回のメゾン・エ・オブジェの来場者数・出展社数は?

今年のメゾン・エ・オブジェの公式サイトで調べたところ出展数は、各国から数千以上のブランドが集結。その中でJAPANブランドは70社ほどです。この展示会には、組合や法人、個人単位で参加でき、日本貿易振興機構(ジェトロ)が仲介する集合ブースもありました。

また地方自治体が交付金を活用し海外戦略を支援するケースもあり、東京都や京都府、滋賀県などが伝統工芸を集めた集合帯のブースを設けていました。例えば東京都は、〈江戸東京きらり〉というブースで日本橋の染物や草履など日本の伝統を発信しています。

今回の総来場者数は100,000人をやや下回るようでしたが、実は初日はパリの公共交通機関のストライキがあったため当初の予想と比べるとやや少なく、イベント全体としては不運だったかなと思います。

― 今回のメゾン・エ・オブジェで印象的だったことは?  

最初に言えるのが、展示会の規模感・世界観の作り方が圧倒的に違うということ。会場の規模や施設の大きさ、天井の高さなどが日本とは異なると言う点があるかも知れませんが、壮大な造作はとても印象的でした。

メゾン・エ・オブジェはインテリアや家具内装関係の展示が多く、実際の需要に即したインテリアが展示されており、ヨーロッパのライフスタイルをそのまま感じられるような空間と環境を再現しています。まるで家を丸ごと再現しているような感覚なので来場者にとって大きな視覚的インパクトがあります。またお酒を飲み、優雅なひと時を共有しながら、和やかなムードで商談を進めていくブースも多く、ヨーロッパ独特の商談スタイルも魅力的でした。

ヨーロッパでは、プレゼンテーションやストーリーの伝え方が日本とは異なります。単純にプロダクトを展示するのではなく、世界観ごと見せていくスタイル。ブランドの中核となるストーリーやナラティブなどへの共感を、実際の世界観を通じて体感させるブランドエクスペリエンスが上手だと感じました。

― JAPANブランドで面白い取り組みをしていたところはありましたか? 

まず私が担当していた神戸レザー協同組合ですが、実験的なプロダクトでもあるソファーを展示していました。こちらは台湾の建築家ジョニー・チウ氏とコラボしたアイテムでもあり、非常にアーティスティックなものです。このソファーは蓮の花が咲いたようなシェイプで、蜂の巣のような特殊な構造をしています。ヨーロッパの人が考えつかないとてもアジア的なデザインだと、数多くの人が集まり写真に収めていました。

また、他の日本からの出展者で面白いなと感じたのは、日本のトイレを塗装しアーティスティックに表現し販売していた宮城県仙台市の住建企業。文化ごとヨーロッパに伝えたいと言う取り組みで、日本のトイレを文化的に海外で表現されていました。日本人にとっては、ウォシュレットや温座トイレは特別なプロダクトではありませんが、一歩海外に出れば特別な経験を付け加える価値のあるものです。トイレの様式すらも日本文化の一部なんだなと改めて再確認できたのは予期せぬ発見でした。

大阪府の堺市の企業も刃物職人で出展。包丁、鋏一つでも切れ味がすごいと評判なのがジャパニーズスタンダードです。今回の展示で、高いクオリティを海外で丁寧に伝えていたのが印象的でした。

そして江戸時代から続く日本伝統のワークウェア「前掛け」の展示も。実は日本市場では、酒屋さんや米屋さんのためのノベルティとしてもらうのが一般的な前掛け。市場が狭いと思われる産業も新たな活路を見出すために「メゾン・エ・オブジェ」に出展し世界で勝負を挑んでいます。

欧州で日本のトイレブームが起きる? 日本のトイレ文化をアーティスティックに表現。(宮城県仙台市・住建企業ブースにて)
日本製品のクオリティが改めて高いことを象徴づけた展示。(大阪府堺市・刃物展示企業ブースにて)
需要を掘り起こし、国内外で人気に!(東京の帆前掛け企業ブースにて)

良いイメージを持つJAPANブランド!?そのアドバンテージをどう活かすかが重要

― 実際、海外の方達と直接お話をされ何を聞かれましたか?

今回ブランド戦略の観点で担当したのがレザーという素材だったため、見る目も厳しく触れた質感だけで良し悪しを判断するバイヤーさんも多くいました。ヨーロッパのバイヤー達はイタリア産やスペイン産レザーに精通し、品質にこだわりがあるからです。よく聞かれたのは品質やサスティナビリティの観点のことでした。「工程でクロムを使用していないか」「二酸化炭素の排出量を減らす努力はしているのか」など。また牛の飼育環境についても聞かれました。動物愛護の観点でここを注視する人もいます。

総じて言えるのは、ヨーロッパではどの産業に対しても環境意識が高く、必要とする情報の深さが違います。メゾン・エ・オブジェでは海外の方達と直接話ができ、新しいフィードバックがもらえる大切な場所。ここでは、深い情報をいかに伝えられるかが重要となってきます。

見る目がとても厳しいバイヤーたち。展示会内では今回も主にフランス語、英語、スペイン語、イタリア語が飛びかっていた。(神戸レザー協同組合ブースにて)

― JAPANブランドのポテンシャルについてはどう思われますか?

メゾン・エ・オブジェに出展して感じたことは、前提としてJAPANブランドにポジティブな印象を持っている人が非常に多いというところ。各国の方が口を揃えて言うのは、JAPANブランドに対して信頼性が高いというところです。日本は固有の素晴らしい文化と高い品質を備えている国、と彼らは2020年代においてもそう信じてくれている。そのアドバンテージをどう活かすかが重要なんです。

冒頭にも述べたようにストーリーテリングがいかに重要であるかを、今回の展示会では感じました。日本固有のユニークさをどのように視覚的に落とし込むのか、感覚的に体験させるのか、プレゼンテーションのマテリアルや会話の中にどう伝えるのかを考えていく必要があります。言語の問題に加え、ある種日本が総じて苦手とする分野なのかも知れませんが、国際競争力を上げるためには必須となってきました。

また日本の中でも衰退している伝統産業や製造業も活路を見出すきっかけにもなります。元々 JAPANブランドは高いポテンシャルを持っていますが、活かし方・提供の仕方次第で変わってきます。

現地のライフスタイルに合わせ若干の調整は必要となってくるでしょう。例えばカルフォルニアロールのような、海苔を食べる文化のない現地の消費者にフィットするチューニングが大事です。このような自国で培ったブランドを大切にしながら、各国の需要に対して若干のチューニングができる人たちが勝ち残っていけると感じたのも事実です。

パリの街に出現した巨大なJAPANブランドが登場!?

― 存在感を示したJAPANブランドがパリの街並みにもあったようですね?

ファッションウィークが同時に開催されていたパリ。中でも多くの人を魅了していたのが、ルイヴィトンと草間彌生氏によるコラボです。パリの街並みを歩けば、多くの広告が。その存在感と影響力が圧倒的でした。商業施設以外にもバス停の広告などにも点在しています。

そしてシャンゼリセ通りのルイヴィトン本店では、巨大な草間彌生像がパリジャンたちを見下ろす巨大なモニュメントで登場。これこそ、JAPANブランドの最たるもので、フランスと日本の芸術的融合を現地で見られたのも日本人として誇らしいと感じました。

欧州の方たちに日本人のパワーを感じ取ってもらう良い事例の一つだと思った今回のパリ来訪。一流ブランドが日本人を大切に扱っていると感じられ、その圧倒的な没入感を作り出すクリエイティブの根源に日本人がいるということは、私たちが持つ美的感覚やファッションセンス、表現の美しさ、強さを認められた証なのかも知れません。

超巨大な草間彌生がシャンゼリゼ通りに出現。「一度見たら忘れられない」と多くの人を驚かせた。

まとめ

メゾン・エ・オブジェや、パリの街並みを席巻したルイヴィトンと草間彌生氏のコラボなど、圧倒的な世界観を見せることは一消費者として心を突き動かすことでしょう。これからますます変わるであろう表現の幅や見せ方。世界に後れを取らないためにJAPANブランドが動向をキャッチアップすることが、どのブランドにとっても重要だと考えます。

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