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クリエイションの深みに圧倒される。国立新美術館「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」レポート

クリエイションの深みに圧倒される。国立新美術館「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」レポート

 ファッションの歴史を築いた偉大なデザイナー、イヴ・サンローラン(1936-2008)。彼の没後初となる日本での展覧会が東京・六本木の国立新美術館で開催されています。彼のクリエイションをリアルタイムで体験したことのない世代にも必見の展示内容!今回はその内容のレポートをお届けします。

「実物を見る」ことでしか得ることのできない感動

国立新美術館で12月11日(月)まで開催されている「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」。この記事では、内容の見どころについてお伝えするとともに、サンローランが引退したのち、現在の「サンローラン・パリ」に至るまでのブランドの経緯にも触れます。

ブランド名やバッグなどのアイテムについてはなんとなく知っていても、ブランドの歴史については意外と知られていないことが多いもの。昨年は「ガブリエル・シャネル展」、今年は「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ展」も開催され、ブランドの歴史やフィロソフィーを改めて知る機会が増えています。

NESTBOWLでは、以前にイヴ・サンローランの映画について触れた記事もご紹介しています。映画では主に彼の人生や人となりについてのに内容が多く見られました。この展示では個人としてではなく、デザイナーとしてのイヴ・サンローランのクリエイションにフォーカスが当てられています。

40年にもわたる創作活動の歴史を、ルック110体を含むアクセサリー、ドローイング、アーカイブ写真を含む262点を通して紐解かれており、「実物を見る」という良さを実感できる圧巻の内容!

ひとりのクリエイターとして何からインスピレーションを得て、それをどう昇華していくのか。制作におけるさまざまなプロセスを想像することができます。

それぞれの章と概要

会場は12章の構成から成っています。それぞれの会場のタイトルと概要は以下の通り。

【0章 ある才能の誕生】
展覧会のプロローグ。デザイナーになる前の才能の片鱗が伺える資料の展示

【1章 初となるオートクチュールコレクション】
1962年に発表された、自身のブランドとしては初のオートクチュールの作品の紹介

【2章 イヴ・サンローランのスタイル】
サファリ・ルックや女性のためのタキシードなど、アイコニックな作品群

【3章 芸術性 刺繍とフェザー】
職人による刺繍や独特のカットを施されたフェザーなど、超絶技巧の数々

【4章 想像上の旅】
アフリカや中国などにインスパイアされた、異国情緒あふれる作品群

【5章 服飾の歴史】
ヨーロッパのさまざまな時代に着想を得た作品群

【6章 好奇心のキャビネット ジュエリー】
本物のダイヤやパールなどにこだわらない、自由な発想による華やかで大振りなジュエリー

【7章 舞台芸術―グラフィックアート】
演劇の舞台芸術のための衣装スケッチや舞台スケッチ

【8章 舞台芸術―テキスタイル】
映画や舞台などで実際に使われた作品群

【9章 アーティストへのオマージュ】
モンドリアンやゴッホ、ピカソなどのアート作品にオマージュを捧げた作品群

【10章 花嫁たち】
ユニークで型破りなウェディングドレスの作品群

【11章 イヴ・サンローランと日本】
1963年に日本を訪れたサンローランのアーカイブ

展示の見どころ

感性の芽生え
プロローグではサンローランが13歳の時に制作した「愛について語るのはなぜ?」という本や、お手製の着せ替え絵本のようなペーパードール、そして唯一のコミック作品「おてんばルル」など、キャリアが始まる前の若い時代の資料が展示されています。

ごく若い頃から、のちのクリエイションに通じる感性が芽生えていることがわかります。

フィロソフィー
「女性を目先の流行から解放し、彼女たちにより大きな自信を与えるためにクラシックなワードローブの基礎を与えること」を夢見ていたというサンローランの言葉。

それまでは船乗りの男性のためのアイテムであったピーコートを女性用にアレンジするなど、彼のファーストコレクションからサファリ・ルックや女性のためのタキシードに至るまでこのフィロソフィーは貫かれていきます。

職人技
デザイナーとしての技量だけではなく、職人の技術にもフォーカスが当てられています。第3章では、華やかな刺繍が施されたカーディガンや、どこまでも緻密にシルエットを計算したフェザーのケープなどが並びます。職人による気の遠くなるような超絶技巧を間近で眺めることのできる、贅沢な空間となっています。

インスピレーション
彼のインスピレーションがいかに自由に飛躍し、発展していくのかというプロセスを、作品を通じて目の当たりにできるのもこの展示の魅力。

マラケシュの別荘を訪れる以外、旅を好まなかったというサンローラン。彼にとっては、読書や舞台、アート鑑賞、歴史にまなざしを向けることも一種の旅であり、そこから想像力を無限に膨らませて作品へと昇華しています。

サンローラン本人も気に入っているという、ロシアの伝説的バレエカンパニーから着想を得たコレクション「オペラ・バレエ・リュス」も必見。

アクセサリー
大胆なアクセサリー使いも見どころです。大振りなブレスレットの重ね付けや、木やイミテーションパールなど、従来はジュエリーとして使用されてこなかった素材も自由に取り入れた、華やかで大振りなジュエリーなど、大胆なスタイリングが印象的です。

衣装スケッチ
作品と衣装スケッチの両方を観ることができるため、より深く作品の世界観を知ることができます。特に舞台のためのスケッチは、彼自身の感性やテイストが強く感じられます。

アートへのまなざし
第9章では、ピカソやモンドリアン、ゴッホなどのアート作品にオマージュを捧げた作品が並びます。唯一撮影が許されているのもこちらの会場。

形態に制約のない芸術と、「着る」という機能を持たなければならないという制約のある服。このふたつの世界の持つクリエイティブな関係性が窺えます。

展示概要

イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル
期間:9月20日(火)~12月11日(月)
会場:国立新美術館
時間:10:00~18:00(毎週金・土曜日は20時まで)
※11月26日(日)・12月3日(日)・12月10日(日)は20:00まで
休館日:毎週火曜日
料金:一般2300円、大学生1500円、高校生900円

現在のブランドとしてのサンローラン

1961年に自身のブランドを創設し、2002年にブランドを引退するまで実に多くの名作を生み出した、イヴ・サンローラン。実際に作品を目の当たりにすることでしか理解できない素晴らしさに満ちた展示内容です。まだご覧になっていない方は、この機会にぜひ足を運んでみて頂くことを強くおすすめします。

ここからは、展示では触れられていない内容となりますが、デザイナーとしてのサンローランだけではなく、ブランドとしての「サンローラン・パリ」についても興味がある方に向けて、彼の退任後の流れについてもご紹介します。

2002年にサンローランが引退してオートクチュールラインは閉鎖。2001年にはトム・フォードがプレタポルテラインの「リヴ・ゴーシュ」を担当し、2005年からはステファノ・ピラーティが引き継ぎました。

2012年には、かつて1997年にリヴ・ゴーシュのメンズラインを手掛けていたエディ・スリマンがクリエイティブディレクターに就任しブランド名を「イヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュ」から「サンローラン・パリ」に変更しています。

2016年からは現在のクリエイティブ・ディレクターであるアンソニー・ヴァカレロが就任。売上を大きく伸ばし続けています。

今年6月に開催された2023年秋冬のメンズウェアショーでは、イヴ・サンローランが別荘を構え、多くのインスピレーションを得た地・マラケシュでショーを行いました。アイコンであるタキシードを再解釈し、メゾンの歴史と未来へのヴィジョンを打ち出しています。

ブランドの歴史を担う第一歩。まずはご登録を!

ブランドの歴史は、常に原点に立ち返っては新たな解釈を繰り返して築かれていきます。そうしたラグジュアリーブランドで働くということは、その歴史の一端を任され、次に繋げるということ。責任はその分重くなりますが、やりがいもまた大きなものとなります。

NESTBOWLではサンローラン・パリを始め、さまざまなラグジュアリーブランドのポジションをご紹介しています。記事を読んで求人情報に興味を持たれた方は、ぜひこちらからご登録ください。

文・写真:ミカタ エリ

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Brand Information

SAINT LAURENT

SAINT LAURENT

1961年に創設された「イヴ・サンローラン」は、
ラグジュアリー・プレタポルテというコンセプトを発表した初のクチュールメゾンです。
現在もなお、アンソニー バカレロののクリエイティブ ディレクションによりラグジュアリー ファッション業界をリードし続けています。