英国の老舗「Clarks」が挑む革新。“靴を売らない”接客と個の声を尊重する独自カルチャー NEW

1825年の創業以来、アイコンモデル「ワラビー」をはじめとする独自の靴作りでファンを魅了し続けてきた「Clarks」。200年の歴史を持つ老舗でありながら、現在は日本国内でのリテールビジネス拡大という新たな挑戦の最中にある。今回、ブランドの新たな顔として期待される「クラークス ニュウマン高輪店」を訪れ、店長の髙橋敬さんとスタッフの中西紋由さんに話を伺った。そこで語られたのは、老舗の看板に安住しない、ベンチャー企業のような熱気と“靴を売らない靴屋”というユニークな哲学。未完成な組織だからこそ味わえる仕事の面白さと経験豊富な2人の想いに迫る。
髙橋 敬さん/クラークスジャパン株式会社 クラークス ニュウマン高輪店 店長
靴業界大手の小売企業で約20年勤務。前職では店長や本社勤務などの経験を経て、2025年8月にクラークスジャパン株式会社に入社し現在に至る。
中西 紋由さん/クラークスジャパン株式会社 クラークス ニュウマン高輪店 サービス担当
セレクトショップでの販売経験を経て、2023年10月に入社。原宿店での勤務を経て、現在に至る。
キャリアへの不安を期待に変えた、「Clarks」で働く人々の温かさと可能性
― まずは、お二人のこれまでのキャリアと「Clarks」に入社した経緯をお聞かせください。
髙橋 敬さん(以下、髙橋):前職も靴業界で、国内の大手チェーンで約20年勤務していました。店長や本社業務など幅広い経験を積む一方で、これからのキャリアに不安を感じていました。組織の若返りが進み「このままここにいて、自分が望むキャリアを描けるのだろうか」と焦りや葛藤を感じていたのです。
そこで慣れ親しんだキャリアに区切りをつけ、転職を決意。その時に偶然出会ったのが「Clarks」でした。ブランドについては知っていましたが、当初は転職先の候補には入っていませんでした。でも、面接官の方が私の経歴をただなぞるのではなく、抱えていた不安や「これから何を成し遂げたいか」という想いに真剣に向き合ってくれたのです。その対話を通じて、「ここなら年齢に関係なく、自分の経験を活かして新しい挑戦ができる」という強い期待感が生まれ、入社を決意しました。
中西 紋由さん(以下、中西):私は以前、セレクトショップで販売をしていました。お店で「Clarks」を扱っており、直営店へ足を運ぶ機会などがありました。その際、スタッフの方同士で話している空気感や、接客中の連携などがすごく良いなと感じていたんですね。商品はもちろんのこと、「人」の魅力に惹かれ、この環境で働きたいという思いを強く持ち、転職を決めました。

伝承される「東京店のDNA」と、根拠を大切にする店舗運営
― 日々の業務の中でどのようなことを大切にされているのでしょうか。
髙橋:店長として意識しているのは、具体性と数値的な根拠に基づいた店舗運営です。感覚だけでお店は作れません。スタッフへの指導や本社とのやり取りでも、可能な限り数字を示し、論理的に説明や提案ができるようにしています。例えば、ディスプレイ一つ変更するにしても、「なぜ変えるのか」「変えることで数字はどう動くのか」と根拠を明示します。ただ、それはあくまで土台に過ぎません。私たちが本当に大切にしているのは、その数字の先にあるものです。
中西:数字はあくまで共通言語であり、目的ではないんです。私は原宿などの既存店で培われてきた「東京店のDNA」を、この新しい高輪店に浸透させることをミッションとしています。「東京店のDNA」とは、「お客様第一の接客」と「チームでの一体感」です。結果はもちろん重要ですが、それと同じくらい「過程」も大切にしています。スタッフがどのような意識で働き、どのようにお客様と向き合ったのか。そうしたプロセスの質を高めることこそが「Clarks」の強みであり、文化だと捉えています。
― DNAや文化を、店舗のスタッフの方にどのように伝えているのでしょうか。
中西:店舗には「サービス担当」の役割があり、現在は私が担っています。具体的な取り組みとしては、毎月「ストアフォーカス」という店舗全体の目標を設定しています。その目標に対して、スタッフ一人ひとりがどのようにアクションするかを組み立て、月末にOJTを通じて振り返ります。同時に、日々の業務でも、スタッフが動きやすいようサポートや声がけを行っています。私自身が率先して動くことで、言葉だけでなく姿勢でも「Clarks」のスタイルを伝えるよう心がけています。

「靴を売らない靴屋」――ユニークな哲学が生む、特別な顧客体験
― 過程を重視する姿勢は、具体的にどのように表現されているのでしょうか。
中西: 私たちは「Create culture to enjoy CLARKS(クラークスを楽しむ文化を作る)」という価値観を大切にしています。このスタンスを最もよく表しているのが、「靴を売らない靴屋」という社内の言葉です。
一見矛盾しているように感じるかもしれませんが、私たちは単に靴を販売するためにここにいるのではないと捉えています。「Clarks」の世界観や、その履き心地の良さを体感していただくことを目指しているのです。試着の際も「靴は履くものではなく足を包むもの」というフィロソフィーをお伝えし、心地よさを共有する。結果として購入に至らなくても、お客様が私たちのファンになってくだされば、それが正解なんです。
髙橋:私たちの接客が、お客様の人生を豊かにするものであってほしい――これが、私たちが根底に持っている想いです。お客様の人生を少しでも豊かにするために、私たちは「売る」ことよりも「楽しんでいただく」ことに全力を注ぎます。この哲学があるからこそ、スタッフは数字のプレッシャーに追われることなく、誇りを持ってお客様と向き合えるのだと思います。
― 独自のスタイルを実現するために、組織としてどのような風土を培っているでしょうか。
中西:スタッフ同士が互いの個性を認め合い、尊重し合える関係性です。心理的に安全な状態でのびのびと働けていることが、心からの「おもてなし」につながっています。
髙橋:そうした風土に加え、日本法人はまだ規模が大きくない分、本社や上長に対して意見を言いやすい環境があります。特に「まずはやってみよう」という前向きさは大きな特徴の一つではないでしょうか。提案に対しては、失敗を恐れずに挑戦させてくれる。自分たちで考え、トライアンドエラーを繰り返しながら新しい価値を作っていく。そのプロセスを楽しめることが、結果としてお客様への深い提案につながっていると実感しています。


求めるのは「思いやり」と「意志」を持つ人
―これからの「Clarks」に必要なのはどのような人材だと考えていますか。
髙橋:仕事に対して、自分なりの目的や目標をお持ちの方です。「Clarks」は長い歴史を持つブランドですが、日本国内のリテール部門に関しては、仕組みが確立されていない部分も多々あります。キャリアパスを含め、明確なレールが敷かれているわけではありません。指示を待っているだけでは良い仕事はできないし、成長もできないでしょう。「自分がどう成長したいか」というビジョンを持って、私たちと一緒に新しい仕組みを作っていける方にぜひ来ていただきたいですね。
中西:チームへの思いやりと向上心を持った方が、マッチすると思います。スタッフ同士がお互いを尊重し合いチーム一体となって動くために、和を大切にできるかが重要です。また、外資系企業でもあるため、自分の意見をしっかりと言語化できる方も向いています。会社と共に成長していきたいという向上心を持ち、意見を伝えることで組織をより良く変えていこうという気概のある方と一緒に働きたいですね。
― 最後に、今後の展望をお聞かせください。
中西:個人としてはチーム全体の成長と、この店舗でのお客様体験の価値を高めていくことが目標です。VMDにも関わっているので商品の見せ方を工夫して、施設内にある数多くのブランドの中でも、一際注目される存在になれるようチャレンジします。
髙橋:ニュウマン高輪は、新しく観光的な要素も強いため、多くの方に「Clarks」を知っていただくにはうってつけの場所です。まずはこの店舗が、ブランド内でのロールモデルになることを目指しています。リテール部門は拡大フェーズにあり、キャリアパスなど明確でない部分も残っています。でも、決まったレールがないからこそ、自分たちの意見で新しい道を切り拓いていく。そうした「作る楽しみ」も、ここでなら味わえるはずです。
「Create culture to enjoy CLARKS」という独自の価値観を軸に、お客様理解を深め、仲間と共に新しい“体験”を創りあげていくClarks。歴史あるブランドでありながら、いま日本のリテール部門はまさに成長フェーズにあり、自分たちの手で仕組みや文化をつくっていける貴重なタイミングを迎えています。Clarksのカルチャーに共感し、“楽しむ文化”を一緒につくりたい方、組織の未完成さを前向きに捉え、自ら動きながらチームと成長していきたい方は、ぜひこちらの採用情報をご覧ください。あなたの想いと個性が、Clarksの未来をより豊かにしてくれるはずです。
文:中谷藤士
撮影:船場拓真
Brand Information
Clarks
Clarks