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「人材育成のための管理者教育4ステップ 」人材不足時代のリテール組織論 Vol.5 NEW

リテール業界では今、「人を採用できない」「育つ前に辞めてしまう」という課題が深刻化している。こうした人材不足の時代に必要なのは、採用力だけではない。重要なのは、人を「採用する」と「育てる」を切り離さず、一貫した組織設計として捉える視点だ。

本連載ではリテール業界に25年以上携わり、現在はリテール特化型HRコンサルタントとして、企業の採用・育成から制度設計、メンタルサポートまでを一気通貫で支援するLiNo代表・森末道弘さんが、リアルな課題と照らしながら自立自走できる組織づくりについて解説する。

※過去記事はこちら→Vol.1、Vol.2(前編)、Vol.3(後編) 、Vol.4


個人の経験則から脱却し、部下育成の共通基準をつくる

前回は、現場任せにしない育成環境をつくるための「2つの軸(管理者のアップデート+TRチームの構築)」についてお話ししました。 

今回はその1つ目の軸である「管理者のアップデート」を具体的にどう組織にインストールしていくのか、実際の研修プロセスに沿って解説します。

単に知識を一方的に教え込むのではなく、現場の当事者意識(主体性)を引き出し、持続可能な「共通のモノサシ(基準)」を自分たちで構築していく実践アプローチです。

ステップ①:店長の役割、ティーチング・コーチングの違いを理解 

管理者教育の第一歩は、「店舗の管理者(店長・サブなど)としての役割とは何か」を明確にし、「チームの共通認識を持つ」ことから始まります。

店舗の管理者は、売上管理、商品管理、店舗管理、スタッフ管理(育成)、本部やデベロッパーとの連携、そしてお客様(顧客)対応など、その役割は多岐にわたります。

これらを円滑に回すために最も重要となるのが、「店舗の環境整備」と「スタッフとの関係構築」です。

 「スタッフが働きやすく定着し、成長(育成)できる環境を整える」ことこそが、あらゆる役割をスムーズに進める土台となります。

そして、その多岐にわたる役割の中でも「人材育成」は、業務の合間に行うおまけではありません。

「部下の成長をサポートし、店舗運営を円滑に回して売上に貢献してもらうための重要業務」であるという共通認識を持ち、その上で人材育成の基本概念を改めて学んでいきます。以下は、指導手法やOJTの流れなどの一般的な人材育成の基本概念(育成理論)をベースにしつつ、私の現場経験に基づき独自の視点でアレンジしたものです。

  • 育成の4項目:「接客技術」「業務のやり方」「知識」「意識(マインド)」の4つに分類して捉える指導
  • 指導手法の使い分け:知識や技術を教える「ティーチング」と、問いかけによって気づきを促す「コーチング」の明確な違いを理解する
  • OJTの一連の流れ:計画 ➔ 説明 ➔ やってみせて ➔ やらせてみて ➔ チェック ➔ アドバイス
店舗で進めるOJTの6ステップ。計画、説明、やってみせて、やらせてみて、チェック、アドバイスの流れ
アドバイスで終わらせず、次の計画へつなげることで指導が継続する

これらを体系的に学ぶことで、まずは管理者の頭の中にある「育成の前提知識」を改めて揃えます。

ステップ②:現場の課題を洗い出し、「定着と育成」の本質を理解

基本を学んだ後は、グループディスカッションを通じて「今、自分の店舗や会社で起きているリアルな課題」を吐き出してもらいます。

  • 「離職率が高く、入社してもすぐに辞めてしまう」
  • 「店舗ごとに教え方がバラバラで、ツールや仕組みがなく属人化している」
  • 「指導に時間を割きたいが、日々の業務過多で手が回らない」

ここで重要なのは、「人が定着しなければ、育てることも育つこともできず、結果として店舗の利益も上がらない」という組織の構造(本質)を理解することです。

「今の若手はすぐに辞める」「本部のサポートが足りない」「なぜこんな人を採用するのか」といった他責の思考から脱却し、「自分たちでどう変えていくか」という当事者意識(主体性)へとマインドをシフトさせていきます。

ステップ③:次世代のために何が必要か?「自分たち」で議論

課題と本質が整理されたら、「これからの次世代スタッフを育てるために、何が必要か?」を管理者同士で議論(ディスカッション)してもらいます。

現場のリアルを知る管理者たちだからこそ、具体的な解決策が次々と上がってきます。

  • 誰が教えても同じ基準で指導できる「統一の育成ツール(チェックシート)」
  • 相手の成長フェーズに合わせた「接客・業務・マインドの育成計画」
  • 明確な「評価基準」や「キャリアプラン」の提示

ここでの最大のポイントは、一方的にツールやルールを押し付けるのではなく、「現場の管理者自身が必要性を感じ、自分たちの手で作り出すプロセス」を経ることです。

これにより、「言われたからやる」という受け身の姿勢から、「自分たちが作った仕組みだからこそ運用する」という強い当事者意識(主体性)が生まれます。


ステップ④:作成・運用・共有までを決め、持続可能な仕組みに

必要な要素が出揃ったら、最後のステップとして「具体的な実行計画」に落とし込んでいきます。

  1. 役割分担:「誰が・いつまでに・どのツールを作成するか」を明確にする
  2. 実践・試行:作成したツールや指導法を、店舗で試してみる
  3. 運用・共有方法の確立:定期的にミーティングで進捗や改善点を話し合い、アップデートし続ける

「作って終わり」にせず、店舗間での成功事例や改善点を共有する仕組みまで考えることで、 組織全体の「共通のモノサシ」が持続的に機能するようになります。

このように管理者教育とは、単なる座学の研修ではありません。

管理者教育の4つの段階。揃える、変わる、生まれる、動き出すの順に段階が上がる
知識を揃えるところから、組織が自発的に動き出すまで。4つの段階を経て「共通のモノサシ」が完成する
  • まず、正しい知識や基準を「揃えて」
  • 他責から当事者意識へ「変わり」
  • 現場に必要な仕組みが「生まれ」
  • 組織全体が自発的に「動き出す」

この一連のプロセスを経ることで、管理者のアップデートを図りながら、現場に根ざした「共通のモノサシ(基準)」を完成させ、人が育つ持続可能な基盤が作られていくのです。

次回は、今回ご紹介した「管理者教育」を全社的なバックアップ体制で支え、どの店舗・どの店長のもとであっても、一貫したクオリティで人が育つ仕組みをつくる「TR(育成専門)チームの構築」について解説します。

PROFILE
森末 道弘 / LiNo代表 1977年生まれ。体育大学卒業後、アパレル業界へ。販売から店長、マネージャー、人材育成・採用まで数社でキャリアを積み、2016年にリテール特化型HRコンサルタントとして独立。ファッションからスポーツブランドなど幅広い分野で、採用・育成・制度設計を一気通貫して支援。現場に寄り添う「伴走型支援」を強みとし、企業の持続的な成長をサポート。

<ご相談・お問い合わせ> 採用・育成・定着支援や教育体制の構築、管理職研修など、リテール組織づくりに関するご相談をご希望の方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。森末道弘さんが企業ごとの課題に寄り添い、採用から育成まで一貫した組織づくりをサポートいたします。

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