「10年後の“また相談したい”」転職エージェント 北川加奈のキャリア論 Vol.7 NEW

学習塾の講師からリクルーターへ転身して18年。現在、人材紹介会社・エーバルーンコンサルティングのヴァイスプレジデントを務める北川加奈さんは、これまで3,000人近くもの人々の仕事人生の岐路に立ち会ってきた。このコラムでは、北川さんがリクルーターとしてキャリアを積み重ねてきたなかで得た学びや気づきを、自分自身の体験も交えながら綴る。
※過去記事はこちら→Vol.1、Vol.2、Vol.3、Vol.4、Vol.5、Vol.6
転職エージェントの仕事をしていると、ふとしたタイミングで、以前ご支援した方から連絡をいただくことがあります。
「久しぶりに相談したいことがあって」
その一言をいただいたとき、私はいつも少し特別な気持ちになります。
転職が決まれば、私たちエージェントの仕事はいったんひと区切りです。その後、定期的にご連絡を入れますが、その方が新しい会社でどんな経験をし、どんな成果を出しているのかを、日々そばで見ているわけではありません。
だからこそ、何年も経ってから近況を聞かせていただくと、その時間の重みを感じます。
今回は、そんな一人の方とのお話です。
活躍と成長を知り、再び転職を支援する喜び
以前、ある企業から採用のご相談をいただきました。
それまでその企業はホールセールスを中心にビジネスを展開していましたが、今後さらに成長していくために、リテールビジネスを強化したいというお考えでした。
そこで、リテールが発達しているファッション業界から、若手の営業人材を採用したいというご依頼をいただきました。
その際に私がご紹介したのが、当時20代だった方です。ファッション業界で営業経験を積んでいたものの、転職先では新しい領域に挑戦することになります。
当時の私は、その方が将来どこまでキャリアを伸ばしていくのか、もちろん知る由もありませんでした。
しかし入社後、その方はリテールビジネスの拡大に取り組み、着実に実績を積み上げていきました。そして、リテール部門を統括するディレクターというポジションを任されるまでになりました。
最初にお会いした頃の姿を知っているからこそ、その知らせを聞いたときは、とても嬉しかったことを覚えています。
ただ、そこに至るまでの10年以上を、私はすべて見てきたわけではありません。
どんな仕事をして、どんな苦労をして、どんな決断をしてきたのか。
その多くは、その方自身にしか分からない時間です。
その方が同じ会社で10年以上の経験を積み、40代を迎えた頃でした。
「そろそろ次のオポチュニティーを考えたいので、また相談したい」
そうご連絡をいただきました。
10年以上前に一度お手伝いした方が、キャリアの節目にもう一度私を思い出してくださった。それだけで、エージェントという仕事をしていてよかったと思える瞬間でした。
そして、その方が次に選んだのは、これまで経験したことのない業界。これまで積み上げてきた営業経験をベースにしながら、まったく新しいフィールドへ踏み出すことになりました。
現在、そのブランドは大きな勢いで成長しています。その成長を支える一人として、今も活躍されています。
20代で初めてお会いした方が、10年以上の時間を経て、40代になり、さらに新しい領域へ挑戦している。
その姿を知ることができるのは、私にとって何より嬉しいことです。
転職支援する自分も、前進する力をもらっている
エージェントが候補者と過ごす時間は、ほんの限られた時間です。
面談を行い、求人をご紹介して、選考を進め、入社が決まる。
そこで、私たちの役割はいったん終わります。その後の毎日は、その方自身のものです。
新しい環境で何を学ぶのか。
どんな人と出会うのか。
どんな壁を越えるのか。
そして、どんな実績をつくるのか。
私たちは、その一つひとつを見届けることはできません。
だからこそ、何年も経ってからお会いしたとき、その方の口から「今、こんな仕事をしています」と聞かせてもらえることが嬉しいのです。
今回も、10年以上の時間を経てお話を伺いながら、
「こんなに大きなキャリアを築かれたんだな」
と、感慨深い気持ちになりました。そして、もう一つ感じたことがあります。
「私も、もっと頑張らなくては」
長くこの仕事をしていると、いつの間にか自分の経験や知識に頼ってしまうことがあります。
そんなとき、以前お会いした方が新しい場所で挑戦し、成果を出している姿を知ると、こちらまで背筋が伸びるのです。
人のキャリアを支える仕事をしているつもりが、実は私自身も、たくさんの方から刺激をもらい、前に進む力をいただいている。
それも、この仕事の魅力の一つなのだと思います。
転職エージェントにとっての信頼の証
転職エージェントにとって、転職が決まることはもちろん大切です。でも、私は最近、それだけが仕事の価値ではないと感じるようになりました。
10年前に出会った方が、10年後にもう一度相談してくださる。
それは、私たちがその方の人生にずっと関わり続けているという意味ではありません。
むしろ、一度送り出した後は、その方自身の力で歩んでいく時間のほうが圧倒的に長い。
だからこそ、次の節目で思い出していただけることには、特別な意味があるのだと思います。
「また北川さんに相談してみよう」
そう思っていただけること。それは、私にとって一つの信頼の証です。
これからも、目の前の求人や転職だけに向き合うのではなく、その方がその後どんな仕事人生を歩んでいくのかまでを想像しながら、一人ひとりと向き合っていきたい。
そしていつか、何年も経った後に、
「久しぶりに相談したいことがあって」
と声をかけていただける。
そんな仕事を、これからも続けていきたいと思っています。
■著者プロフィール
北川加奈/エーバルーンコンサルティング株式会社 ヴァイスプレジデント・人材コンサルタント
静岡県出身。英国留学後、塾の講師を経て人材業界に転身。2021年エーバルーンコンサルティングに上級職として就任。ラグジュアリー、ファッション、ライフスタイル、コスメ業界に強みを持ち、外資系エグゼクティブサーチに従事。1,000件以上の紹介実績があり、業界屈指のネットワークを誇る。平日は都会的なライフスタイル、週末はアウトドアを愛し、愛犬と共に都市と自然の調和の取れた生活を送る。
「次のキャリアを考えたい」「業界にフィットする人材を探したい」――そんなご相談は、北川加奈さん(kitagawa@aballoon.co.jp)までお気軽にお問い合わせください。 ラグジュアリー、ファッション、ライフスタイル、コスメ業界を中心に、1,000件以上の紹介実績を持つエグゼクティブサーチのプロフェッショナルとして、一人ひとりに寄り添いながらサポートいたします。
Brand Information
A Balloon Consulting
「エーバルーンコンサルティング(A Balloon Consulting)」は、東京と大阪を拠点にしたファッション業界に特化した人材紹介サービス会社。販売スタッフからエグゼクティブクラスまで、ファッション業界の優良な人材と企業をつなぐエージェントとして、多くの紹介実績を持つ。