1. HOME
  2. 最新ニュース&インタビュー
  3. ラグジュアリーブランドのマネージャーが教える、グローバルキャリア成功のカギ Vol.13 仏教、ヨガ、風水。海外経験から学んだ心の整え方

JOURNAL

ラグジュアリーブランドのマネージャーが教える、グローバルキャリア成功のカギ Vol.13 仏教、ヨガ、風水。海外経験から学んだ心の整え方

ラグジュアリーブランドのマネージャーが教える、グローバルキャリア成功のカギ Vol.13 仏教、ヨガ、風水。海外経験から学んだ心の整え方 NEW

ラグジュアリーブランドの海外支社で働く――。そんな憧れを実際に叶えた、日本人男性・野﨑健太郎さん(ペンネーム)が綴るコラムです。日本人がグローバルで働く上で知っておきたいこと、海外のマーケット動向、キャリアアップしていくためのヒントとは……?これまでたくさんの挑戦と成功を重ねてきた野﨑さんだからこその視点や気づき、エピソードなどを交えながらお届けします!
※過去記事はこちら→
Vol.1Vol.2Vol.3Vol.4Vol.5Vol.6Vol.7Vol.8Vol.9Vol.10Vol.11Vol.12


2025年も終わりに近づいてきました。今年最後のコラムは、先月に続いて「海外に出て気づいた日本人の強さ」について、今月はより実践的なアプローチを少し掘り下げてみたいと思います。

先月のコラムでは、私が異国の地で強く感じた「日本のすごさ」や「日本人の強み」について書きました。そして、「日本人はもっと自己肯定していいのではないか」という思いに行きつきました。自己肯定するためには、まず自分を知ることが大切で、そのためには自分のバックボーンである「仏教的な習慣や考え方、ZEN的なもの」を改めて見つめ直してみるのも良いのではないか、というお話でした。

2002年、僕は初めての海外挑戦としてオーストラリアへワーキングホリデーに行きました。あまり計画性もなく飛び込んだ海外生活は、想像以上に厳しい現実の連続でした。いい仕事が見つからないストレス、孤独、失恋、金欠。精神的にも肉体的にも追い込まれ、自分で自分の命を絶ってしまいそうになるほど辛い瞬間もありました。そんな状態から、どうにか立ち直ることができた理由のひとつが、自分のルーツを知ろうとしたことでした。仏教的な考え方を生活に取り入れたり、YOGAを日常の一部にしたりする中で、少しずつ自分を取り戻していった感覚があります。

いわゆる「怪しげなスピリチュアル話」を書くつもりはありませんが、これから海外転職やワーキングホリディを考えている方、海外で困難に直面している方にとって、少しでも参考になる部分があれば嬉しいです。

お墓参りへ行く

若い頃は、ただ親に連れられるままに行っていたお墓参りでしたが、年齢を重ねるにつれて、お墓参りが自分にとってとても大切な行動であることに、少しずつ気が付くようになりました。私の父は、「わざわざ行かなくても、家から手を合わせれば同じだ」と言って、お墓参りにあまり行かない人物でした。一方で母は、父である健太郎を高校生の時に亡くしており、信心深く、お墓参りをとても大切にしていました。

お墓参りへ行くと、自分が今ここにいることは、ご先祖様たちのおかげであること、そして今目の前にあるこの時間や風景は、ご先祖様たちがきっと生きたかった瞬間であり、見たかった場面なのだと、あらためて実感します。すると、今ここに生かされていることへの感謝の気持ちが、自然と湧き上がってきます。

以前は、お盆やお彼岸以外にお墓へ行くことはほとんどありませんでしたが、最近では、少し時間ができた時に、ふとお寺へ足が向くようになってきました。すると本当に不思議なのですが、帰り道やその数日後に、自分にとって良いことが起きることがあります。ご先祖様に見守られているような、そんな気持ちになる瞬間です。現世利益的なリターンを求めているわけではありませんが、気持ちがすっきり整うことで、結果的に幸運を引き寄せているのかもしれません。自分のバックボーンを感じることで、自分が少し強くなれる。そんなお墓参りは、私にとって最高の宗教的行為だと思っています。

ヨガ、呼吸、瞑想

一般的に「ヨガ」というと、まだ「ストレッチの延長」と思われがちですが、とても奥深いものがあり、呼吸や瞑想、日常生活までがヨガであり、精神的鍛練、肉体的鍛練には最高のトレーニングです。仕事や趣味においても大きなリターンが得られる可能性があります。私がヨガを始めたのは約23年前の25歳の時で、シドニーのグリーブという当時「オルタナ系」が集まる街ででした。サーフィンを上達したいという気持ちで始めたのですが、一気にハマってしまい、半年くらいベジタリアンになったほどでした。信じられないほど体調がよくなり、精神的にも落ち着き、毎日「奇跡を起こせるかも(笑)」、と思ったほどでした。今も粘り強く続けていて、まだまだ身体も硬いですし、初中級者の域を出ていませんが、人生に欠かせない生活の一部になっています。特に呼吸法の効果は抜群で、僕は特に英語での会話や会議での発言などが、スムーズになる実感がありました。集中力も強く長くなり、仕事や筋トレもはかどります。タイミングとしては静かな朝がベストですが、満腹でなければ1日15分、いつでも取り入れることをお勧めします。

僕は週に3-4回30分、週に1回は60分以上やるように心がけています。5分呼吸20分ポーズ5分瞑想というような簡単な内容です。今はYOUTUBEやアプリなどもあるので、とてもやりやすいのではないかと思います。

もし時間が無ければ、5分間の呼吸法だけでもやるだけで、大きな効果が得られます。医学的にも、呼吸が自律神経に与える好影響は証明されていて、多くのトップアスリートやパフォーマーがとりいれているようですので、ぜひ騙されたと思って試してみてください。(僕のおすすめはインドのSivananda Yoga Centre GurgaonのYoutubeです)

体調が良くなると、不思議と仕事もうまくいきます。精神的に落ち着いていると、仕事で無用な敵を作ることも減り、チームと調和しやすくなります。仕事がうまくいけば、結果として収入も自然と上がってきます。

私は収入を目的にヨガや呼吸法を実践したことはありませんが、副産物として有難く受け取っています。それ以上に、体調が良いことで毎日を楽しく、気持ちよく過ごせること。これこそが、何にも代えがたい最大のメリットだと思っています。

顔のお布施、言葉のお布施

「お布施」というと、お金をお寺や神社へ寄付することを思い浮かべる人がほとんどだと思います。人はGiveすることで幸せを感じる生き物なので、無理のない範囲でお布施ができる人は、もちろんすばらしいと思います。

ただ、どうしてもお布施にお金を使うのは苦手だ、という人もいると思います。(僕がまさにそうです。)そんな人のために、仏教には「顔施(がんせ)」と「言施(ごんせ)」という考え方があります。笑顔で優しい表情でいることのお布施、そして、優しい言葉で人に接することのお布施です。これらの言葉は、仕事のことで悩んでいた当時の僕の心を、そっと救ってくれた言葉でもありました。

人は誰しも、「人の役に立ちたい」という気持ちを持っています。それは何も、高度な技術や知識を使ったり、何千人、何万人に影響を与えたりすることだけではありません。身の回りにいる人に、やさしい笑顔を向けること。やさしい言葉をかけること。それだけでも、十分に世の中の役に立っているのだ、という仏教の教えです。

若い頃、悩みすぎて迷路に入り込んでしまった仕事選びですが、最終的に「販売員」という仕事を選んだのは、この言葉との出会いが一つのきっかけでした。そしてシンガポールにいる今も、同じ思いで仕事をしています。

顔施や言施の良さ、そして強さは、何といっても年齢や国境、人種をすべて超えて通じるところにあります。これも現世利益的なリターンを狙っているわけではありませんが、自分の笑顔や言葉をGiveすることで、自然と他の人たちも自分にGiveしてくれる、そんな好循環が生まれます。しかも、まったくお金はかかりません。よかったら、ぜひ一度試してみてください。

シンガポールは風水

最後に「迷信ぽいもの」「怪しいもの」として捉えられがちな、「風水」に触れてみたいと思います。実は「シンガポール=風水」と言えるほど、風水が浸透していることご存じでしょうか?「シンガポールを知るには、風水を知るべし」これは旅行で数日訪れただけでは耳にしない話かもしれませんが、シンガポール在住者の間ではある種の常識として認識されています。

シンガポールの風水エピソードは検索すればたくさん出てきますので、ここでは触れませんが、風水を取り入れると単に「運気が集まる」という話だけはでなく、「人が何となく気持ちがいい」と感じる環境心理学であることが分かります。

私が風水的な考え方を取り入れたのは、自宅を建てる時で、間取りやデザインを建築家さんにお願いした時でした。自由に設計できるので、軽く風水の本に目を通したのですが、

「台所は北側がいい。なぜなら南側は暖かくて食べ物が痛みやすくなるから」「玄関は東向きがいい。なぜなら朝日が入って活動的な気持ちになるから」など、単なる運とか迷信というよりかは、人類のこれまでの経験のエッセンスのように感じて、家の間取りを決めるうえで非常に参考になりました。そして出来上がった家はとても気持ちが良く、友人たちが頻繁に遊びに来てくれたり、運気が爆上がりし、建ててる途中に転職(昇進)が舞い込み、家を建ててから次男誕生、超高額の懸賞当選、海外転職の夢実現、と目まぐるしく運気の波がやってきました。波が来た時に波に乗れるか。これはまた別の話として、来年掘り下げてお話ししたいと思っておりますが、風水的な考え方を「知識として参考にして、最終判断は自分でする」というスタンスは、これまでの人類の知恵を参考にできるので、損することはないと思います。

さて、ここまで仏教的なものや宗教的なものの「俺流」の取り入れ方を共有してきましたが、いかがでしたか?少し触れづらいテーマではありますが、あえてビジネスだと割り切って考えてみるのも、ひとつの方法かもしれません。実際にやってみて「利益」が「投資」を上回ると感じられるようであれば取り入れれば良いと思います。反対に「損」がでたり、気持ちが上向かないようでしたら、それは合っていないのかもしれません。その場合は、無理に取り入れなければいいと思います。

日本人は、宗教的な直観に比較的優れている民族だと思いますので、特定の宗教に強く依存しなくても、自然や先人の知恵に耳を傾ける感覚をどこかで共有しているのではないでしょうか。自分自身を大切にしながら、古の人々の教えに触れてみるそんな距離感で向き合うことをお勧めしたいと思います。

もちろん「祈り」や精神的な支えも大切ですが、その前提として、日々の仕事や勉強に真摯に向き合うことは欠かせません。量も質も意識して努力を重ね、それでもなお、拮抗した勝負になったとき──最後の差を分けるのは、ある種の運や巡り合わせのようなものかもしれません。

そんな場面で、普段は意味がないように見える宗教的な行為や考え方が、ふと背中を押してくれることがあります。迷ったときに立ち止まらせてくれたり、逆に一歩踏み出す勇気をくれたりする。私自身、そうした瞬間を何度も経験してきました。自分を信じ、努力を続けたうえで、最後にそっと支えてくれるもの。そんな存在として、宗教や精神性を「俺流」で取り入れてみるのも、良いのではないかと思います。

今年の最後も、クリスマスと初詣という、一見すると矛盾している二つの宗教的な行事を迎えますが、日本人らしく、自分なりの距離感で楽しめば良いのではないでしょうか。

■著者プロフィール
野﨑健太郎

大学卒業後はモデルとして活動し、国内外のショーや広告などに出演。28歳のとき、大手量販店で販売のアルバイトを始める。その後、いくつかのラグジュアリーブランドでのストア、オフィス勤務を経て、2021年12月より某ブランドのシンガポール支社に勤務。趣味は高校時代から続けているサーフィン。

■ペンネームへ込めた想い
野﨑健太郎はペンネームで、尊敬する祖父の名前です。祖父は明治生まれで、西郷隆盛を思わせるような大きな体と味海苔をおでこに張り付けたような太い眉の持ち主でした。東京・五反田を拠点に京浜工業地帯で鉄を拾って歩き回り、町工場を営んでいた祖父。信条は「上天丼を食べたいなら、人の倍働け!」でした。残念ながら50代で亡くなり、直接会うことは叶いませんでしたが、この言葉は親戚を通じて私の耳に届き、私の心に深く刻まれています。祖父のハードワーク魂が自分に宿ることをこのペンネームに込めました。

SNSでこの記事をシェアする