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ラグジュアリーブランドのマネージャーが教える、グローバルキャリア成功のカギ Vol.19 シンガポール移住の実際

ラグジュアリーブランドのマネージャーが教える、グローバルキャリア成功のカギ Vol.19 シンガポール移住の実際 NEW

ラグジュアリーブランドの海外支社で働く――。そんな憧れを実際に叶えた、日本人男性・野﨑健太郎さん(ペンネーム)が綴るコラムです。日本人がグローバルで働く上で知っておきたいこと、海外のマーケット動向、キャリアアップしていくためのヒントとは……?これまでたくさんの挑戦と成功を重ねてきた野﨑さんだからこその視点や気づき、エピソードなどを交えながらお届けします!

※過去記事はこちら→Vol.1Vol.2Vol.3Vol.4Vol.5Vol.6Vol.7Vol.8Vol.9Vol.10Vol.11Vol.12Vol.13Vol.14Vol.15Vol.16Vol.17Vol.18


7月。シンガポールのインターナショナルスクールは夏休みも終盤となり、8月の第2週から新学期が始まります。今年からインターに通い始めた次男は、6月中旬に日本へ一時帰国し、横浜市の小学校に1か月限定で通わせてもらっています。

「日本で税金を納めていないのに、日本の教育インフラを利用するのはどうなの?」というご意見もあるかもしれません。その点については、申し訳ないです。

ただ、横浜市の担当の方は、「在校生にとっても刺激になる」と言って快く受け入れてくださり、学校の先生方や子どもたちも温かく迎えてくれました。初日から4人の新しい友達と一緒に帰ってきた姿を見て、親として本当に感謝の気持ちでいっぱいになりました。

そんな中、シンガポールから日本へ本帰国する芸能人の方が話題になりました。ネットではさまざまな意見が飛び交っていますが、中にはシンガポールについて少し誤解されている部分もあるように感じました。今回は、実際に暮らしている立場から、この国のリアルをお伝えしたいと思います。

シンガポールで子どもを育てるということ

私の子供たちの場合、長男は小学校3年生まで日本で育ちました。性格はどちらかというと内向的であったため、日本人小学校に通い、その後中学部へと進学しました。各学年に1クラスだけあるグローバルクラスに運良く合格し、日本人とシンガポール人のダブル担任によるバイリンガル教育を受けています。快活で優秀なクラスメイトにも恵まれ、「学校が楽しい」と話してくれることが親として何より嬉しいです。

一方、次男は4歳からシンガポールで育ち、現地の幼稚園に通いました。英語で話すことにまったく抵抗がなく、誰とでもすぐ友達になれる性格です。そんな本人の個性を考え、小学3年生からインターナショナルスクールへ通わせています。実際に通わせてみて、一番驚いたのは、子どもの負担の大きさでした。

月曜日から金曜日まではインターナショナルスクールへ。土曜日の午後は、日本語補習校で3時間の国語の授業を受けます。勉強はもちろん大切ですが、小学生のうちは学校帰りに友達と公園で遊んだり、休日はスポーツをしたり、自然の中で過ごしたりする時間も同じくらい大切なのではないかと思っています。年中暑いシンガポールでは、日本のように外で思い切り遊べる時間も限られます。

子育てには正解がありません。子どもにもそれぞれ個性があります。実際に住んでみて、「思っていた環境とは違った」と感じれば、日本へ帰国することも一つの選択肢だと思っています。

「税金が安い国」というイメージ

シンガポールは税金が安い。これは事実です。私のような会社員でも、その恩恵はあります。外国人の場合、日本より所得税負担が軽くなるケースが多く、税金も給与から天引きされるのではなく、後から自分で納める仕組みです。そのため、可処分所得は増えやすくなります。しかし、その分を家賃が吸収してしまいます。

私たちのような子育て世帯では、学校やスクールバス、職場への通勤を考えると、家賃は月に4,000~5,000シンガポールドル前後(1シンガポールドル ≒ 125円 で換算した場合、約50万円~60万円前半)になることも珍しくありません。

税金は安くても、住居費という大きな固定費があるのです。結果として、「お金が出ていく」という意味では、日本もシンガポールもそれほど単純な話ではありません。私が気になるのは、「そのお金がどこへ向かっているのか」です。

シンガポールでは、国家予算の約1割強が教育に充てられています。世界中から優秀な研究者や教員を招き、人材育成に力を入れています。一方、日本は少子高齢化や社会保障、防衛費など、多くの課題を抱えています。そのため、同じ割合を教育へ振り向けることは簡単ではありません。もちろん、教育予算が多ければ教育の質が高いという単純な話でもありません。日本はノーベル賞受賞者を数多く輩出していますし、私自身、仕事を通して日本人の細やかさや問題解決能力の高さを感じる場面は今でも少なくありません。それでも、教育を国家の未来への投資として位置付けている姿勢は、この国で暮らしていると強く感じます。

行政と暮らし

行政の仕組みという点では、シンガポールは非常によくできている国だと感じます。国際的にも汚職が極めて少ない国として知られ、透明性の高い行政が維持されています。行政手続きも驚くほどスピーディーで、「決まったことはすぐ動く」という印象があります。法律が厳しい国というイメージがありますが、実際にはゴミをポイ捨てしない、公共のルールを守る、違法薬物に関わらないなど、当たり前のことをしている限り、窮屈さを感じることはほとんどありません。

兵役制度についても誤解されることがありますが、私のように就労ビザで滞在している外国人には兵役義務はありません。一方で、永住権(PR)を取得した場合は制度が変わり、条件によっては子どもに兵役義務が生じることがあります。また、永住権を取得しない場合は、公的年金制度(CPF)の対象外であることや、住宅購入時の税制面などで不利になる場面もあります。

つまり、シンガポールは「権利だけを得られる国」ではなく、どの立場を選ぶかによって、受けられる制度や求められる責任が変わる国です。そのバランスの取り方は、とてもシンプルで分かりやすいと思います。

シンガポールはつまらない?

こちらで暮らしていると、よく耳にする言葉です。確かに、納得する部分もあります。でも私は、その土地を楽しめるかどうかは、自分の興味や知識にも左右されるのではないかと思っています。

例えば私の場合、休日になると、よくシンガポール植物園を歩きます。何気なく見ている木にも由来があり、歴史があります。ガイドさんの話を聞くと、それまでただの木だったものが、急に物語を持ち始めます。植物園の中にあるオーキッドガーデンも同じです。花だけではなく、品種改良や外交、歴史まで知ると、本当に奥深い世界が広がっています。

派手な観光地は少ないかもしれません。でも自分から一歩踏み込めば、この小さな国には思っている以上に奥深い魅力があります。「税金が安い国」という一言だけでは、とても語りきれません。ニュースやSNSだけでは見えてこないシンガポールがあります。もし機会があれば、一度この国を歩いてみてください。きっと、数字やイメージだけでは分からない景色が見えてくると思います。

■著者プロフィール
野﨑健太郎

大学卒業後はモデルとして活動し、国内外のショーや広告などに出演。28歳のとき、大手量販店で販売のアルバイトを始める。その後、いくつかのラグジュアリーブランドでのストア、オフィス勤務を経て、2021年12月より某ブランドのシンガポール支社に勤務。趣味は高校時代から続けているサーフィン。

■ペンネームへ込めた想い
野﨑健太郎はペンネームで、尊敬する祖父の名前です。祖父は明治生まれで、西郷隆盛を思わせるような大きな体と味海苔をおでこに張り付けたような太い眉の持ち主でした。東京・五反田を拠点に京浜工業地帯で鉄を拾って歩き回り、町工場を営んでいた祖父。信条は「上天丼を食べたいなら、人の倍働け!」でした。残念ながら50代で亡くなり、直接会うことは叶いませんでしたが、この言葉は親戚を通じて私の耳に届き、私の心に深く刻まれています。祖父のハードワーク魂が自分に宿ることをこのペンネームに込めました。

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